映画「シビル・ウォー アメリカ最後の日」アメリカの分断を近未来の内戦で描く
全米でこの作品が公開されたのは、4月12日。日本人には馴染みが薄いかもしれないが、この日はアメリカ史においては最も重要な日の1つ、1861年に南北戦争の戦端が開かれた日だ。 南北戦争は工業化の進展で新たな労働力を必要としていた北部23州と、農業中心のプランテーション経済で成り立っていた南部11州の戦いで、奴隷制の存続をめぐっても、激しい対立を生んでいた。 本作の原題でもある「CIVIL WAR」は「内戦」という意味だが、アメリカの南北戦争は、他の内戦と区別するために「American Civil War」あるいは「The Civil War」と呼ばれている。本作もまた、近未来を舞台に、連邦政府から19の州が離脱、カリフォルニア州とテキサス州からなる「西部勢力(Western Forces)」と、掟破りの3期目に突入しようとする大統領を中心とする政府軍の「内戦」をテーマとしている。 いまも分断が進行しているアメリカにあって、「内戦」を扱ったというセンセーショナルな話題からか、公開週には約3800スクリーンで上映され、2週連続で週末の興行収入第1位を記録している。 ・「分断」を映したロードムービー 「シビル・ウォー アメリカ最後の日」は内戦を題材にはしているものの、直接の戦闘場面を作品の中心には据えてはいない。戦火のなかでニューヨークから首都ワシントンへと向かう戦場カメラマンとジャーナリストの視点から、アメリカ国内の深刻な分断が描かれていく。 作品の冒頭は「われわれは歴史的勝利に近づいている」というアメリカ大統領(ニック・オファーマン)の独善的な演説から始まる。シニカルにも映るこのシーンは、どうやら最後の衝撃的結末に呼応する場面として配置されているようだ。 大統領の勇ましい演説にもかかわらず、戦況は日増しに予断を許さないものとなっており、カリフォルニア州とテキサス州を中心とする西部勢力が、首都ワシントンへと迫っていた。