社説:高浜50年超運転 原発依存深める危うさ
国内で稼働する中で、最も古い関西電力高浜原発1号機(福井県高浜町)が営業運転開始から50年を超えた。 長期運転による安全性への懸念は消えず、原発構内にたまる使用済み核燃料の行き先も確定していない。事故時の避難計画の実効性も疑わしい。 高浜原発の30キロ圏には京都、滋賀の8市町も入る。なし崩しの老朽原発の運転延長は受け入れ難い。 1974年に運転を開始した高浜1号機は、定期検査中の2011年に起きた東日本大震災を受けて運転停止が続いたが、東京電力福島第1原発事故を踏まえた「原発の運転は原則40年、最長60年」とする規定が16年に適用され、23年に再稼働していた。 原子力規制委員会は今年10月、10年ごとの管理方針を定めた関電の保安規定を認可したことで、50年を超えて少なくとも60年までの運転が可能になった。 規制委は原子炉圧力容器が破損する恐れがないことやコンクリートの強度が維持されているとする関電の評価を確認したという。 そもそも40年超えは、電力不足など「極めて例外的」措置だった。半世紀以上前の原発は、設計そのものが古い。取り換えられない原子炉の劣化状況を調べるために、あらかじめ炉内に仕込まれた試験片が、当初の想定を超える長期運転で不足する可能性も指摘されている。 青森県の核燃料再処理工場の完成が見通せない中、今年9月末時点で燃料プールの貯蔵率87%に達した使用済み燃料の扱いも、早晩行き詰まるのではないか。 政府のエネルギー基本計画では、40年度の原発割合を2割程度にする目標で、30基程度の稼働が必要となるが、現状でも稼働は13基にとどまる。 そのため、昨年の法改正では、安全審査などで停止していた期間を運転期間から除外する規定も設け、実質的に60年超の運転を可能にした。 だが、元日に発生した能登地震では、震源に近い志賀原発(石川県)で外部電源などが損傷し、災害時の原発リスクを見せつけた。周辺道路が寸断され、想定通りの住民避難が難しいことも改めて浮かび上がった。 ロシアのウクライナ侵略を踏まえ、日本海側に並ぶ原発の安全保障上の弱点も指摘されている。 福島原発の事故とめどが立たない後始末を直視すれば、原発に依存し続ける危うさは明白である。