新入社員の意向尊重か?企業の人員充足か? 人事担当者の悩み「配属先の伝達時期」...入社後4割も、改革進む企業続出
単なる人員充足ではなく、適性と志向を尊重した配属コミュを
――なるほど。企業都合か、新入社員中心の考え方か、という点のギャップですね。ところで、新入社員の配属について従来の方針を見直す企業が増えています。人事担当者のフリーコメントでは、見直しをしないと「会社の存続にかかわる」といった危機感が伝わってきます。 栗田貴祥さん 構造的な人手不足を背景に、新入社員の配属についても見直す必要性を感じている企業が半数以上という結果になりました。 具体的には、当研究所の『就職白書2024』の採用活動の振り返り調査では、2024年卒の採用活動では、採用充足企業の割合は36.1%と、調査開始の2012年卒以来で最低値を更新し、厳しい状況が続いています。 激しい採用競争の中、新入社員の早期退職は、以前に比べより一層深刻な問題になっており、社員により長く活躍してもらう必要があると、多くの企業が考えている結果の数字だと捉えています。 ――たしかに、見直しが実施できているかどうかで、「3年以内の早期離職率」に大きな差がありますね。「就活生・新入社員の希望が重視される」ことと「なぜそのポジションに配属されるのかの説明・納得感」が大事だとリポートでは報告しています。 栗田貴祥さん 「希望が重視される」ことの差が大きい背景には「人員充足観点」のみで配属を決定する企業が一定数存在することが考えられます。 同様に、「説明する・納得感を確認する」ことについても「人員充足観点」のみで配属を決定した場合に、配属理由の説明や本人の納得感の確認が難しいという事情があると推察します。 いずれについても、本人の希望を叶えることができるか否かに関わらず、企業として従業員のキャリア形成を支援する姿勢を伝えるなど、単なる人員充足ではなく、新入社員の適性と志向を尊重した配属コミュニケーションを行うことが重要だと考えています。
総合商社でも進む、選考コースの多様化
――報道によると、総合商社でも配属先を採用時に確約したり(住友商事)、志望する分野を選べる「部門別選考」と「通常選考」を用意したり(三井物産)、また、パナソニックHDは約150の選考コースを用意したりするなど、大きな変化が起こっています。栗田所長から企業への具体的なアドバイスをお願いします。 栗田貴祥さん 学生の志向や価値観が多様化する中で、それぞれの志向に応じて選べる採用の在り方が重要であると考えています。 配属確約の応募ルートを設ける、選考中に配属先について可能な範囲で明示するなど、多様化する個人の志向や価値観に合わせて、配属先に対する不安を取り除くための柔軟な対応をとっていくことが、採用戦略実現に向けた一手となり得るのではと考えています 。 ――今回の調査で、特に強調しておきたいことがありますか。 栗田貴祥さん 企業は、配属を必ずしも学生の内定承諾前に確定すべきであると主張したいわけではありません。配属確約にあたっての課題などをお示しすると、配属を入社前や内定承諾前に配属先を伝えなければならないのかという疑問を持たれる企業の方もいらっしゃると思います。 もちろん配属先が早めに分かることは学生にとっても好ましいことだと思います。しかし、配属を入社前に確定させること以上に、なぜここで働いてもらいたいのかを、企業の人員充足の都合だけではなく、本人の適性や意向を踏まえたコミュニケーションを取ることが非常に重要です。その前提があった上での、配属確約だと考えています。 個人にとってよりよい職場づくりをすること、そしてそれを学生に解像度高く伝えていくことが、企業が選ばれるために重要なポイントだと考えています。 (J‐CASTニュースBiz編集部 福田和郎)