【ライブレポート】“神崎エルザ starring ReoNa”と“ReoNa”両名義による対バン形式ライブに会場が熱狂
■憎まれ口を叩くエルザに対して、「勝負しようか、エルザ」とReoNaが持ち掛ける 10月19日、東京ガーデンシアターにて、“神崎エルザ starring ReoNa”と“ReoNa”によるライブイベント『神崎エルザ starring ReoNa × ReoNa Special Live “AVATAR 2024”』が開催された。 【画像】『神崎エルザ starring ReoNa × ReoNa Special Live “AVATAR 2024”』ライブ写真 “絶望系アニソンシンガー”として、数々のアニメ作品の主題歌を担当しながら、あらゆる人々の絶望に寄り添う“お歌”を届けて幅広い支持を得ているReoNa。そんな彼女のアニメ音楽との関わりの出発点となったのが、TVアニメ『ソードアート・オンライン オルタナティブ ガンゲイル・オンライン(以下、GGO)』に登場する歌姫・神崎エルザ(CV:日笠陽子)の劇中曲の歌唱を担当する、“神崎エルザ starring ReoNa”としての活動だ。 本公演は、その両名義による楽曲を対バン形式で披露する、特別な形のライブイベント。過去に2度、2018年と2019年にも同様の公演が行われ、神崎エルザとReoNaの共演が実現したわけだが、今回はそれらを上回る深度の演出とパフォーマンスにより、これまで“歌”を介して繋がってきた両者がステージ上での邂逅を果たした。 ライブは、ReoNaがSNS上で公開している音声コンテンツ「こえにっき」を用いたスペシャルムービーからスタートする。ReoNaの日々の感情や思いを形にした言葉が流れるなか、ときおりノイズと共に混ざるピトフーイ(※神崎エルザが『GGO』内で用いているアバターの名前)の声。彼女の「怖いわよ。死ぬのが怖いからこそ、こんなに楽しいんじゃない」という劇中の印象的なセリフと同時に映像が途切れ、舞台上のReoNaにスポットライトが当たる。そして始まるエルザとReoNaの対話。しかも収録音声ではなく、エルザ役の声優・日笠陽子をゲストに迎えた、生の声によるリアルタイムの会話劇だ。 いつものように憎まれ口を叩くエルザに対して、「勝負しようか、エルザ」と持ち掛けるReoNa。勝負事の大好きなエルザはこの提案を喜んで受け入れ、対バンという名のバトルの幕が開ける。先攻はReoNa。黒のワンピースにレザージャケットという、お馴染みのコーディネイトの彼女は、体験型アトラクション『ソードアート・オンライン -アノマリー・クエスト-』の主題歌「Weaker」を情熱的に歌い上げると、そこからMCを挿みながら「forget-me-not」「Scar/let」「ANIMA」と歌っていく。いずれも『ソードアート・オンライン(以下、SAO)』シリーズに関連した楽曲で、その曲目からもエルザとの対バンのために選び抜いたことが伝わってくる。ラストはReoNa自身も作詞に関わった家庭用ゲーム『ソードアート・オンライン Last Recollection』の主題歌「VITA」で、NPCもアバターも含めたあらゆる出会いに捧げる“命の物語”の歌を力強く届けて締め括った。 続いて弦カルテットがステージに登場すると、生演奏によるクラシックの名曲が会場を満たしていく。神崎エルザ starring ReoNaの楽曲はいずれもクラシック音楽をモチーフにしていることもあって、この先のライブへの期待が高まる演出だ。そしてパッヘルベルの「カノン」が奏でられるなか、バンドが登場してスタンバイし、神崎エルザ starring ReoNaのステージが始まる。彼女が1曲目に選んだのは「ピルグリム」。ReoNaとしてのキャリアにおいても大切な始まりの歌だ。先ほどとは対照的な白いワンピースを着て裸足でステージに立つReoNa。いや、いまの彼女は“ReoNa”ではなく“神崎エルザ starring ReoNa”だ。エルザの魂をその身に降ろした彼女は、自ら爪弾くアコギやストリングスの音色も交えながら、命が尽きるまで終わることのない、果てしない巡礼の旅路のあらたな一歩を踏み出す。 MCパートを担当するのは、声優の日笠陽子。先ほどのReoNaのライブの感想を語るなど、“神崎エルザ starring ReoNa”と“ReoNa”はあくまでも別個の存在であることが演出面においても強調される。エルザが持ち曲をすべて歌うことを宣言して歓びに沸く会場。そこから「step, step」「レプリカ」「ヒカリ」「葬送の儀」と、これまで神崎エルザ starring ReoNa名義でリリースされたミニアルバム『ELZA』とシングル「Prologue」からの楽曲を次々と披露していく。特に「葬送の儀」は、エルザが亡くなった祖父母のことを想って書いた楽曲とあって、ひと際気持ちのこもった歌声が心に染み入る。 続いて「Disorder」「Independence」「Dancer in the Discord」と、彼女の楽曲のなかでもとりわけアグレッシブな楽曲を立て続けて会場を熱狂させる。ReoNaの燃え上がるようなステージングにシンクロするように、日笠によるエルザの観客を煽る声が被せられて、2人が“神崎エルザ”として一心同体になっていく。他のライブでは決して体験できない、不思議な感覚だ。 ここで現在放送中のTVアニメ『GGO』第2期のCMにて告知が入り、突如配信が始まった約5年ぶりの新曲「Game of Love」をライブ初パフォーマンス。さらに「今日は特別なライブだから、もう1曲新曲を持ってきてるんだよね~」とMCで語った彼女は、完全未発表の新曲「Girls Don’t Cry」をサプライズで披露する。エルザいわく「私たちガールズは、いつもメソメソ泣いているだけじゃない」ということを歌ったこの楽曲、歌詞には自分の気持ちの赴くままどこまでも前に突き進んでいく、エルザらしいメッセージ性が織り込まれていて、オーディエンスは彼女の言葉をひと言たりとも漏らさないように聴き入っていた。 その後、再び弦カルテットが加わって「ALONE」を届けると、その後のMCでさらにうれしいサプライズ、神崎エルザ starring ReoNaの2ndミニアルバム『ELZA2』が12月25日にリリースされることが告知され、喜びに沸く会場。そしてエルザのライブは早くもラストナンバーに。彼女が「友達の前で初めて歌った曲なんだけどさ……」と紹介して歌ったのは「Rea(s)oN」。TVアニメ『GGO』の最終話、神崎エルザのライブのシーンで、彼女が主人公の小比類巻香蓮(レン)の前で歌った楽曲だ。エルザの声が「神崎エルザにとっての“あなた”、それは……今ここにいる君たちだよ」と前置きし、ReoNaは会場に集ったすべての“あなた”に向けて歌を届ける。「Rea(s)oN」は普段のReoNaの楽曲でもセトリに組み込まれるが、神崎エルザ starring ReoNaとして歌うこの日だけは、“ここに生きるReason それはあなたでした”という歌詞の意味合い、その歌に込められた想いがまた違って響いたように感じた。 歌い終えて「今日はありがとう!神崎エルザでした!」という挨拶と共にステージを去ったReoNa。だが、誰もいなくなったステージに、再びエルザの声が響き渡る。「久々のライブだからさ、正直、私もまだ歌い足りないんだよね!」と、観客に対してアンコールを呼びかける彼女。ReoNaのライブにはアンコールはない。それは彼女がデビューして以来、すべてのライブにおいて貫いているスタンスだ。だが、エルザの「まさかこの神崎エルザの誘い、断らないよね?」という挑発、そして2人による真剣勝負の延長戦を望むオーディエンスの声が奇跡を起こす。ReoNaが初めて、アンコールに応えてステージに戻ってきたのだ。 「普段はアンコールやらないんですけど、エルザに呼ばれたらしょうがないか」と告げた彼女は、エルザからのプレゼントとしてステージに置かれていたエレキギターを手にすると、今度こそ正真正銘ラストの楽曲、現在放送中のTVアニメ『GGO』第2期のOPテーマ「GG」を届ける。ReoNaを含めたギター4本編成によるグランジロックのような荒々しいバンドサウンドと、それに呼応するかのごとく激しく叫ぶように歌唱するReoNa。間奏でエルザの「お前らそれでいいのか?」と会場を煽る声が入り、ReoNaも「マガジン使い切れよ?」といつになく鋭い声で呼びかける。ラスサビでは日笠陽子もステージに登場して、エルザとReoNaが本当の意味での共演を果たし、スペシャルライブは大団円を迎えた。 ゲームなどの仮想空間におけるユーザーの分身体を指す言葉“アバター(AVATAR)”をタイトルに冠した本公演。それは『GGO』というアニメ内のキャラクターである神崎エルザと、その歌唱担当、いわば神崎エルザの“歌アバター”とも例えられるReoNaが、次元を超えて真剣勝負を繰り広げ、ひとつのステージを作り上げる、誰かの絶望にだけでなくアニメ作品にもしっかりと寄り添うお歌を届けてきた、ReoNaだからこそ成し遂げることのできたライブだったのではないだろうか。 TEXT BY 北野創 Photo by 平野タカシ リリース情報 2024.12.25 ON SALE MINI ALBUM 神崎エルザ starring ReoNa『ELZA2』
THE FIRST TIMES編集部