「持続可能な光の中に」佐原ひかり×真下みこと『スターゲイザー』刊行記念対談
持続可能な光が届いた先に
佐原 『かごいっぱいに詰め込んで』を読み返して気づいたんですが、真下さん、第二話以外、光の描写を最後に書いているんですね。 真下 何かの時に佐原さんに言われたことが生きているんですよ。 佐原 何か言ったっけ? 怖い(笑)。 真下 「真下さんは最後にもうちょっと光量を上げたほうがいい。ハッピーエンドだったら花火をぶち上げるような光を書いたほうがいい」って。 佐原 え!? そんなこと言いましたっけ。 真下 「真下さんのハッピーエンドは、真下さんが思っているほどハッピーに見えないから、もしハッピーに見せたいなら、もっと分かりやすく、光とか、花火とか、そういうものを出したほうがいいですよ」って言われたんです。 佐原 ごめん。めっちゃ偉そうなこと言ってるな、私(笑)。 真下 言われてみると、たしかに佐原さんの作品って自然に光が当たっているんですよね。それで、私も今回、がんばって光らせてみたんです。 ――佐原さんは今回、『スターゲイザー』の三章で「光が嫌いだ。/逃げも隠れもできないステージで、おれを突き刺す光」という書き出しで、光のネガティブな側面も描いていますね。 佐原 そうですね。『スターゲイザー』は全編通じて星とか光が出てきますが、必ずしも肯定的な光の話だけではないというのは自分でも意識していました。 真下 佐原さんが光を否定するような感じで書かれていたから、光を書き尽くすとそうなるのか、と思ったんですよ。佐原さんはお名前がひかり。光の権化というか。 佐原 光の権化でやっております(笑)。 真下 『スターゲイザー』で、ステージの光が目を刺すようにまぶしいという描写が印象的で、たしかにあれだけ光っていたらまぶしいよなって。 佐原 そうですよね。私、いつもアイドルのコンサートにサングラスに耳栓で行っているんですよ。あまりにも照明がまぶしすぎて、音が大きすぎるから。私たち観客はそうやって対策できるんですけど、歌って踊っている側はできないじゃないですか。そういう肉体的な負荷は絶対あるなと思っていて、それも書きたかったんです。 私、今回、書店員さん向けの見本にメッセージを書かせてもらったんですけど、そこにはこう書きました。 「私自身が推す側であり推される側である。だからこそ、私の好きな人たちが、そして私自身がどうすれば持続可能な光でいられるのかみたいなのを考えながら書きました」。 真下 「持続可能な光」っていいですね。 佐原 めちゃくちゃ輝いていたら一瞬で燃え尽きてしまいそう。燃え尽きないようにアイドルを続けてほしい。真下さんも「お体大切に」とか読者の方に言われることないですか。 真下 言いますね。最近、私、大河ドラマの『光る君へ』にハマっていて、ドラマに出てきた「お健やかに」っていうセリフを挨拶代わりに言ってます。たしかに大切な人には「お健やかに」いてほしいなと。 佐原 祈りですよね。ブログとかメールの末筆に、「お健やかに」とか「体調にお気をつけください」とか毎回書いているのは、とりあえずみんな健康でいてほしいという気持ちからなんですよね。ファンもアイドルに対して思っていると思うんですよ。「お健やかに」。親みたいですけど(笑)。 「小説すばる」2024年10月号転載
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