外信コラム 韓国の秋の悩みは…ギンナンの悪臭に人々鼻つまむ 実付けないイチョウへの植え替え懸命
ドングリを韓国語では「トットリ」というが、その実の粉で作ったコンニャク風の練り物である「トットリムック」は韓国の伝統食品になっていて、食堂でもよく突き出しとして出てくる。茶色で味はないが食感がいい。豆腐のように薬味入りの醬油(しょうゆ)で食べる。近年は低カロリーの健康食として人気なのだが、材料のドングリ不足が悩みになっている。 というのは、リスやテンなど野生動物のエサを奪ってはいけないという環境保護運動のせいで、これまで自由だった〝ドングリ拾い〟が規制されているためだ。保護区域が広がり、街の公園やハイキングの山道で拾っていると、運動団体のメンバーに注意されるほどだ。その結果、今や食用の多くは中国からの輸入だとか。 一方、同じ木の実でもイチョウの実のギンナンは厄介者扱いされている。ソウル都心の徳寿宮通りのイチョウ並木は人気の散歩道なのに、踏みにじられたギンナンの悪臭にみんな鼻をつまんでいる。以前は食用に拾い集めている人が結構いたが、街路樹のギンナンには公害物質が含まれているとかで拾われなくなった。市当局は、実をつけないイチョウに植え替えるのに懸命だ。昔は考えられなかったような配慮を余儀なくされているのだ。先進国になった韓国の秋の風景である。(黒田勝弘)