「 心理的安全性 」に関する誤解 Vol.1:チームのパフォーマンスを下げる理由
心理的安全性は「弱み」ではなく「武器」になる
ハーバード・ビジネススクール(Harvard Business School)のエイミー・エドモンソン教授は20年以上にわたって心理的安全性の概念を研究してきたが、数多くの組織で心理的安全性が大きく誤解されていることには同氏も同意している。「ここでベースになるのは、心理的安全性とは『あなたが心地よいと感じることの本質は、気まずい状況になっても大丈夫だと信じられることである』との理解だ。病室のベッドのそばでだれかの失敗を指摘するとか、重要な新製品のローンチに関する議論の中で上司の意見に反対するなんて、決して居心地のよいことではない。これらはすべて本質的に難しいものだ。だが絶え間ないイノベーションと学習と改善が求められるダイナミックな世界にあっては、成功のために必要なことだと思う」と同氏は述べている。 心理的安全性の恩恵を得るためには、リーダーは問題解決の答えが見つからないときに快くそれを認め、全員からの意見に耳を傾ける必要がある。人によっては、弱さをみせるのはハードルが高いと思うかもしれない。特にチームメンバー全員から賛同が得られるという信頼がない場合はなおさらだ。「心理的安全性は武器にもなる」とリーダーシップ開発会社マインドセットシフト(Mindsetshift)の創設者でエグゼクティブコーチのソープ・アグベルシ氏はいう。 「その武器の矛先がリーダー向かうこともある。常に1人や2人は『それは個人的すぎる』とか『弱すぎる』と考えて異議を唱える人がいるからだ」。これは、スタートアップだった会社が数千人のスタッフを抱える大企業へと成長するときに、特に大きな問題になる。急成長を遂げながら同じ文化を維持し続けることは難しく、心理的安全性を根付かせるための努力は簡単に失われてしまう」と同氏は強調した。 この現代的な働き方は、特にベテラン社員からは見下されがちで、彼らはこれを試そうとするマネージャーに抵抗するかもしれない。だが最高のパフォーマンスを達成するためには、リーダーはビジネスのゴールを見据えて断固たる態度を貫く必要がある、とアグベルシ氏は付け加えた。「リーダーとは、自分がすべての答えを持っているわけではないことを認識できる人だ。自分が人間であり、学び、成長し、仲間とともに目標に向けて旅をするための唯一の方法は意識して耳を傾けることであって、ただ受け身に聞き流すことではないと知っている人こそが、リーダーなのだ」と同氏はいう。 そして「世の中にはリーダーの仮面をかぶっただけのマネージャーがたくさんいると私は思う。彼らはタスクのこなし方のノウハウや技術的な能力を持っていたおかげで報われてきた人たちだ」と述べた。 12月14日公開のVol.2に続く [原文:Why employer misunderstanding of psychological safety is hurting teams’ performance] Jessica Davies(翻訳:SI Japan、編集:分島翔平)
編集部