ユニフォームがなんと35億円で落札、ベーブ・ルースは本当にそのホームランを予告したのか
714本塁打、打率.342、2873安打を誇る「打撃の帝王」の伝説を検証
世界有数の米オークションハウス「ヘリテージ・オークションズ」によると、ベーブ・ルースの名前が内側に刺繍されたグレーのニューヨーク・ヤンキースのユニフォームが8月25日のオークションで2412万ドル(約35億円)で落札され、「世界で最も価値のあるスポーツコレクション」になった。1932年のシカゴ・カブスとのワールドシリーズで、投手チャーリー・ルートからベーブ・ルースが予告ホームランを打ったときに着ていたものだ。 ギャラリー:ベーブ・ルースも登場、米国野球伝統の始球式名場面集 写真7点 この試合の5回表、4対4の同点、2ストライクという状況で、強打者ベーブ・ルースはセンター方向を指さした。すると、次の打球はリグレー・フィールドのツタに覆われたレンガの壁を越えるホームランとなった。これが決勝打となり、ヤンキースに3連勝をもたらした。 しかし、ルースが実際にホームランを予告していたかどうか、確信が持てない人もいる。伝説的な左利きスラッガーが何か別のことを示していた可能性もあると考えているのだ。
ホームランの予告か、それとも罵声への警告か
「『予告ホームラン』はルース伝説の中で最も不朽の物語の一つです」と、メジャーリーグの公式歴史家であるジョン・ソーン氏は言う。「なぜアメリカは、約90年も前に引退したこの選手にいまだに魅了されているのでしょうか?」 おそらく、「予告ホームラン」の伝説が語り継がれているのは、ルース自身が他の誰にもできないようなことを野球場で成し遂げるカリスマ性と才能を持っていたからだろう。 豪放で華やか、そして極めて才能豊かな彼は、野球界最高給の選手としてぜいたくな生活を送りながらも、ビールとホットドッグだけの食生活を送っていたと伝えられている。それでも、ルースは特大ホームランを打つことができた。 シカゴでのあの秋の日にいったい何が起こったのかは、議論の余地がある。ルースはその打席で何をしたのかについて、いくつかの説明をしている。 当初ルースは、罵声を浴びせてきたカブスのベンチを指さして、自分がまだ1ストライク分残っていることを示したと言っていた。 カブスの選手たちが試合中、ルースにやじを飛ばしていたのは、マーク・コーニッグ選手のワールドシリーズのボーナス配分をめぐって、カブスとヤンキースの間でもめていたからだと、ソーン氏は説明する。 コーニッグはヤンキースの遊撃手だったが、シーズン途中でカブスにトレードされた。コーニッグがチームにいたのは半年だけだったため、カブスの選手たちは彼にポストシーズンの賞金の半分を与えることに決めた。 しかし、ヤンキースの選手の多くはこれに不満をもった。ルースはワールドシリーズ第1戦でカブスのベンチに向かって「ケチな無能選手ども」と叫んだと言われており、これに対してシカゴの選手たちもやじを返した。 しかし、その後のニュース映画『ムービートーン・ニュース』とのインタビューで、ルースは話を変え、実際に球場外にホームランを打つと予告していたと言った。 「センター方向を見て指さし、『次のボールをフラッグポールのすぐ向こうに打ち込む』と言ったんです。まあ、善良な神様が私についてくださっていたに違いありません」 では、実際には何が起こったのか?