雪解け間近の北海道 目覚め動き出すヒグマ…"冬眠中や冬眠明け"狙った駆除 本格化「保護→個体数管理」政策転換―去年の狂騒からことしを展望
「怖い」カメラマンの目の前に…保護重視から駆除へ方針転換
騒動は雪が降り始めても収まらなかった。12月、北海道中部の芦別市で、木材会社の倉庫にヒグマが居座った。 「クマが出てきた。走り回っている!」(UHBカメラマン) 騒ぎを取材していたカメラマンの前に突然現れた。すぐに避難し無事だったが、現場は一気に緊迫。「怖いな」。つぶやいた本音も残っていた。 クマは体長1.3メートル、体重70キロのメス。現場が住宅街だったことや、人を襲うそぶりを見せたこともあり、駆除された。
語り継がれる人食いグマとの戦い→1990年以降は保護
北海道に開拓使が置かれた明治以降、先人はヒグマと対峙し、人食いグマとの戦いも語り継がれてきた。 冬眠中や冬眠明けを狙う「春グマ駆除」が有効な手段として推奨された。草木が雪で覆われ見通しがよく、残雪で足跡も追いやすい。 ただ、価値観は時間の流れとともに変わる。絶滅の恐れがあるとして、1990年以降、春グマ駆除を禁じた。
北海道のシミュレーション 個体数は「30年でほぼ倍増」
約30年がたった。道のシミュレーションではヒグマの個体数は2020年度で1万1700頭となり、ほぼ倍増したと推定。環境省の専門家検討会はクマを「指定管理鳥獣」の対象に加える方針案をまとめた。 保護に重点を置いてきたクマを捕獲管理へ転換する。クマの捕獲費用の一部を国が負担する。人の生活圏への出没を未然に防ぐため電気柵を設置し、ハンターの育成にも取り組む。北海道の鈴木直道知事も歓迎した。 「スピード感を持って対応してもらい感謝したい。地域の切実な声を理解してくれた」(鈴木知事) 増え過ぎたから減らす。人間の一方的なロジックによる政策転換で、クマとの共生が実現するかは分からない。間もなく冬眠しているクマたちが目覚め、動き出す。
UHB 北海道文化放送
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