King Gnuやきゃりーが支持する特殊メイクアーティスト、KAIHOとは?
ーアイデアが浮かばなかったり、スランプに陥ることは? 好きにやらせてもらっているからなのか、あまりないかもしれないです。同時並行でたくさん仕事を抱えていたりするのでわけがわからなくなる時はありますが、目の前の作業を進めながらも、別の仕事があると次の面白いことを考える時間にもなるから、半分現実逃避しながら次の作品のデザインを描いたりして、楽しみながらやっています。みんなには「間に合うんですか?」と心配されていますが(笑)。
「現場に行く時は一番かっこいい服で」
ー以前、眉村ちあきさんの番組に出演されていた際に、ご自身の作品の特徴の一つに「ファッション性」があるとおっしゃっていたのが印象に残っています。今日の装いを拝見しても、ファッションがお好きなのかなと感じました。 最近は忙しくてあまり買えていないのですが、ファッションは結構好きですね。人と被らない服が好きで、「ニードルズ(NEEDLES)」とか古着屋とかで買ったりしています。 ー作業着もあるのでしょうか? エプロンはあるんですが、作業着はないですね。作業をする時も、今着ているような日常着が多いです。アトリエのスタッフには、「現場に行く時は一番かっこいい服で来て」と言っていて。特殊メイクや特殊造形と言っても、顔にメイクを施す時に、身なりや道具が汚い人に触られるのって嫌じゃないですか。だからメイク道具も絶対に綺麗じゃないと嫌だし、そうじゃないとプロじゃないなと思っています。自分が仕事をする中で、良い現場には一流の俳優やモデル、スタッフの方がいるし、そういう現場にいるメイクさんは、みんなものすごく綺麗なメイク道具を使っているんですよね。自分たちもそこに並ぶような感じでやりたいので、ちゃんとしようと。 ー身なりや道具だけではなく、このアトリエもすごく綺麗にされてますよね。 僕自身が汚れるのが好きじゃなくて。どうしても、シリコンや石膏を触ったりと絶対に汚れてしまうような作業があるんですけど、それもできるだけ汚れないようにやりたいし、やるようにしています。 ーこれまで「メゾン ミハラヤスヒロ(Maison MIHARA YASUHIRO)」やバッグブランドの「ビゴター(BIGOTRE)」などファッション系の仕事もいくつかされていますが、もっとやってみたいという気持ちはありますか? あります。これまでやってきた仕事では、まだそこまで振り切ったものは作れていないので、個人的には「もっとできるのにな」と思っていて。自分が手掛けている作品を見てくれた人やブランドが、ゴリゴリに自分のやりたい世界観でオファーしてくれないかなと。例えば、ファッションショーで全員特殊メイクで出てくるのとかをやってみたいですね。 ー具体的に協業してみたいファッションブランドは? 「コム デ ギャルソン(COMME des GARCONS)」や「アンダーカバー(UNDERCOVER)」「グッチ(GUCCI)」「キディル(KIDILL)」などは世界観が合いそうだなと思っていて。最近はショーで少し尖ったことをやるブランドも増えているような感覚があるのですが、やっぱりがっつり特殊メイクみたいなものはなかなかないですよね。だから、いつか来ないかなと期待しています(笑)。 ー快歩さんの作風は、海外からの受けも良さそうに感じます。2020年にオーストラリアで開催された特殊メイクの世界大会(WBF 2020 World Championships Special Effects Makeup)で3位に選出されていましたが、その後海外からの仕事は増えましたか? すぐにコロナ禍になってしまったこともあって、残念ながら来ていないんです。でも、SNSなどを通じて見てくれている海外の方は増えているので、どこかのタイミングで、急にビョーク(bjork)とかからオファーが来ないかなって妄想しています(笑)。今はとにかく作品を作って発信するしかないのかなと思っているのですが、それこそ何かのブランドでパリコレに参加できたりしたら、海外でも多くの方に知ってもらえるのになと。 ー師匠のAmazing JIROさんは、「ノワール ケイ ニノミヤ(noir kei ninomiya)」のショーでずっと特殊メイクをやられているそうですね。 JIROさんも業界の中では特殊な存在で、「特殊メイクは映画だけではなくなんでもあり」という人だったので、それを見ていた僕はさらに「なんでもいいじゃん」と思うようになりました。それで普通の特殊メイクっぽくないものばかり作っていたので、一時は「扱いづらい人」枠になってしまって仕事がかなり減りましたが、それでもずっと続けていたらきゃりーさんやヒゲダンさんに声を掛けてもらったりして「なんでもあり」の仕事が増えていったので、続けてみるもんだなと思いました。 ー独立するとなった時、JIROさんはどんな反応でしたか?