King Gnuやきゃりーが支持する特殊メイクアーティスト、KAIHOとは?
ーかなりハードな生活をされていたんですね。 そんな生活をしながら頑張って自分の作品を作って、当時はフォロワーも全然いなかったけどSNSに載せていたら、ある日KingGnuのチームから「次のMVで特殊メイクを使いたくて」と連絡が来て。それが、自分で覚えている限り最初にきた、人に堂々と話せるちゃんとした仕事でした。当時はまだKing Gnuが爆発的に人気になる前で、「It's a small world」という楽曲のMVで使う特殊メイクの依頼だったんですけど、その時にデザインからやらせてもらって、ボーカルの方に宇宙人的な特殊メイクを施しました。それから口コミなどでも広まったのか、じわじわといろいろな人から声をかけてもらえるようになりましたね。 ー仕事のオファーがあった時はどんな気持ちでしたか? もちろん嬉しかったんですが、その時はまだKing Gnuを知らなかったので「なんかいかつい人たちから連絡がきたな」と思いました(笑)。でも飛び込んでみたら、「すごく面白いなこの人たち」と感じて。今でもちょくちょく関わらせてもらっています。 ーKing Gnuに始まり、Official髭男dismやきゃりーぱみゅぱみゅ、藤井風など、音楽系の方とのお仕事が多いですよね。 アーティストの方は、自分の作品を見た上で依頼をしてくださって、結構好き勝手にやらせてくださる方が多いので、それがマッチしているんだと思います。最近は短編映画やCMなどでも「好きにやってみて」と任せてもらえる仕事を少しずつもらえるようになってきたので、仕事が広がっていくと、いろいろなジャンルで自由度の高い仕事も増えてくるのかなと感じています。 ー今までやってきた仕事の中で、特に印象に残っているものは何ですか? それぞれの仕事に全部思い出があるんですが、特にきゃりーぱみゅぱみゅさんの仕事は、僕のアトリエの世界観みたいなものが毎回しっかり出せているように思います。なかでも、2022年10月に武道館で10周年のライブがあった時に、未確認生物を造形したマスクと、それまでやったことがなかったステージデザインをして欲しいと頼まれて。きゃりーさんはずっと自分のデザインを見て知ってくれていることもあって、そういう時は急に夜中に電話が掛かってくるんです。「快歩さんならできそうだと思ったんですけど、やってくれますよね?」みたいな感じで。初めてやるから予算感も安全面も、武道館の舞台の制約などもよくわからなかったのですが、 「一旦好きにやります」と言ってデザインを描いてみたら、意外と全部できてしまいました(笑)。未経験の分野でも、「快歩さんならできそう、面白くしてくれそう」ということで依頼してくれて挑戦したので印象に残っていますし、そういう仕事がもっと増えていったら嬉しいです。 ーそういう大きなプロジェクトだと、躊躇したりプレッシャーを感じたりしそうですが。 僕はあんまりないんですよね。「面白そう」が先行するので。最初の頃は自分のキャパがわかっていないので「できるのかな?」と不安に思うこともありましたが、今は「なんかいけちゃってるし、いけるでしょ」みたいな感じでやっています(笑)。もちろん見誤ったらまずいことになってしまうので、そうならないように気をつけながらですが。 ーその中でも、これまでで一番プレッシャーを感じた仕事は? アーティストのyamaさんの仮面を作る仕事が、今までで一番難しさを感じました。依頼が来たのがyamaさんがまだ顔出しをしていない時で、当時は男でも女でもないような中性的なイメージのイラストが1枚だけ公開されていました。そのタイミングで「THE FIRST TAKE」に出ることになって、マネージャーと一緒に相談しに来てくれて。「とりあえず顔を隠したい、あとは何も決まってない」というおまかせ状態だったのですが、イメージもキーワードも全くなかったので「これで合っているのかな?」と手探り状態でした。仮面は異色のものだと思っているので、それがアーティストに合っていなかったりおかしかったりしたら売れなくなってしまうんじゃないかと不安もありましたが、今となってはあの仮面がyamaのアイコンになっているし、本人も自分の顔だと思ってくれているので、「正解だったんだ」と安心しました。