King Gnuやきゃりーが支持する特殊メイクアーティスト、KAIHOとは?
ゾンビやエイリアンだけじゃない、“なんでもあり”の技術
ー快歩さんが手掛ける特殊メイクや作品の強みや特徴は、どんなところでしょうか? 特殊メイクは、モデルありきで人の顔に合わせて作っていくものなので、メイクを施す一人ひとりのモデルにどう馴染ませられるか、似合わせられるかということはすごく考えています。自分が作る作品は、現実には絶対にいないキャラクターや顔なのですが、それでも「いそう」と思わせるために、薄くする部分や強調させる部分のバランスを意識したりと、パーツの細かいところに気を遣っていて。着ぐるみなども含めた特殊衣装だと、僕は色をたくさん使っています。 特殊メイクって、ゾンビやエイリアンのようなおどろおどろしいイメージを持たれがちなんですが、特殊メイクは“なんでもあり”の技術だと思っているので、それを使ってもっと面白い表現ができると思うし、誰もやったことのないような表現をしたくて。なので、必ずしもそんなに生っぽくせずに色をたくさん取り入れながら、でもちゃんと統一感を持たせてどうまとめるかというバランスはすごく意識しています。 ー作品を作る時は、どういったものを着想源にしているんですか? いろいろ見てはいるのですが、自分でも「これ」というのははっきりわからなくて。初めにまず落書きをして、それで出てきたものをブラッシュアップしてデザイン画にすることもあります。忙しすぎてインプットができないとどんどんアイデアが同じような感じになってしまうので、映画を観たり気になる展示を休日に一気に回ったりして、いろいろなものを見て強引にでもインプットするようにしていますね。あとは、ちょっと変な場所に行くということを結構していて。例えば、熱海の「まぼろし博覧会」という、色々な地域の閉館した秘宝館や博物館などから展示品を大量に集めてきたものを、広大な敷地に雑多に並べているようなスポットがあるんですけど、そういうちょっとゾワっとするような、みんながあまり好んで行かないような変な空気のある場所が面白いと思うし好きなので、定期的に行っています。 ー最近見た作品などで、特に好きだったものはありますか? 最近改めて観てすごくいいなと思ったのが、「ロッキー・ホラー・ショー」(監督:ジム・シャーマン/1976年公開)という映画作品で。ちょっと変な映画なんですけど、「これぞ多様性」というのか、本当にいろんな人種の人や変な人がいっぱい出てくるけど、それが普通という世界の中で話が進んでいて、衣装もかっこいいしメイクも良くて、繰り返し観ていますね。 ー特殊メイク以外にも、マスクやグッズ、他の様々な創作物をご自身で作られていますよね。 特殊メイクのアーティストは、裏方として映画やショーで使う何かを手掛けることが多いのですが、僕は一人のアーティストとして手掛けた作品を知ってもらいたいという思いがあって。例えば、カエルのコインケースを作ったりしているんですけど、 それも特殊メイクの技術や造形物を用いながら、色も特殊メイク的な塗り方をしています。そういう「誰が使うんだよ」みたいなものを誰かが買ってくれたり、それがいろんな人のカバンの中に入っていたりしたらすごく面白いなと思ったので、グッズなどを作り始めました。もっともカエルのコインケースは、元々実家が花とカエル雑貨の店をやっていたので、あまり仕事がなかった頃に店に置いて売ってもらって、小銭を稼いでいたところから始まっているんですが。 ーそうなんですね(笑)。でも確かに、一般の人が特殊メイクに直接触れる機会ってなかなかないですもんね。 どうしても、特殊メイクは映像や写真を通して触れることが多い技術なのですが、自分自身が「実際にいたら超面白い」というところから入っているので、ショーとかイベントで出てきたりしたら面白いと思うし、そういう仕事が増えたらいいなと思っています。やっぱり実物を見てもらう方が、結構すごいことをやってるんだなというのが伝わるので。撮影の現場でも、頑張って作った特殊メイクを見た人たちが「すごい!」とリアクションしてくれる瞬間が一番楽しくて好きですね。 ー反対に、もうこの仕事を辞めたいなと思ったことはありますか? 仕事自体を辞めたいと思ったことはあまりないのですが、正直制作の半分以上はやりたくない疲れる作業なので、「めんどくせ~」と言いながらやっています(笑)。完成間近が好きだし、完成して見てくれた人のリアクションが面白いなと思うので、それがあるから続いているのかなと。