『トップガン』俳優グレン・パウエル、ヒットマンになりきりすぎて監督さえも気づかず
ちょうどコロナ禍が始まった頃で、グレンは、脚本を練るためにリンクレイター監督と素晴らしい会話を交わすことが出来たと語る。「人々が人生で大きな変化を経験し、自分たちの選択に、そして自分が何者かということに、行き詰まりを感じていた。多くの人々がコロナ禍に感じたのは、なりたい自分になれるチャンスだった。一緒にいたいと思う誰とでも、一緒にいられるチャンスだった。そういう話をすればするほど、ゲイリー・ジョンソンは、僕たちみんながなりうるファンタジーのような存在になっていったんだ。それは本当に特別なことだったよ」とグレン。本作には、コメディー、スリラー、フィルムノワールとさまざまなジャンルが混在しているが、参考にした映画として、グレンは『トッツィー』や『深夜の告白』『白いドレスの女』などを挙げていた。 セクシーな殺し屋”ロン”にふんしたゲイリーとマジソンの関係が始まってからのストーリー展開は、グレンとマジソン役のアドリアとの相性が抜群なこともあって、娯楽性に満ち溢れている。もちろん、二人のエピソードは新たに創作されたものだが、「リック(リンクレイター監督)にとって、リアルに感じられることはとても重要」と言うグレンは、「常にフィクションよりも事実を選んだ」と明かす。 「(ロケ地の)ニューオーリンズ警察から状況を聞いたり、人々に話を聞いたり、ゲイリー・ジョンソンの報告書を読んだり、録音もたくさん聞いた。ファンタジーを膨らませる前に、地に足をつけたやり方でストーリーの土台を作る必要があったんだよ」と徹底的にリサーチしたうえでの創作だったと語った。 本作の大きな見どころのひとつが、グレンが、衣装やメイク、話し方などを変えて、さまざまな殺し屋を演じる爆笑必至のシーンで、その演技力に唸らされる。撮影開始の直前まで2人で脚本を書いていたため、事前にリンクレイターに殺し屋のキャラクターをまったく見せられなかったというグレンは「最初は不安だったけど、演じていてとても楽しかった。僕がキャスト用バンから降りて来ると、リックは、いろんなアクセントで話す殺し屋を初めて見ることになったんだ。リックにとって最も衝撃的だったのは、僕が赤毛で出てきた時で、息ができないほど大笑いしていたよ」。