リコージャパン、デジタルサービス事業戦略を説明 中堅中小のDX促進を目指してアプリ間連携を推進
リコージャパン株式会社は20日、2024年度のデジタルサービス事業の事業戦略説明会を開催した。全体の事業戦略については8月に説明会を開催しているが、今回はデジタルサービス事業について、詳細な事業の進捗状況や、新たな事業の柱としているGX事業に関して、報道関係者向けに説明した。 【画像】「リコーサイバーセキュリティーパック」が好調に推移 デジタルサービス事業は、ターゲットとしている中堅・中小企業の課題である人手不足対応、DXによる生産性向上、セキュリティ確保などに対応するためにアプリケーション領域を強化する。また、人材確保が重要になってくることから、リコージャパン社内の人材を育成する、「スペシャリスト認定制度」を設け、セキュリティやAIなどの専門的知見を持った人材育成を進めていく。 GX事業は、自治体、電力節約などを検討する企業からの需要があり、着実に収益が拡大し、CAGR30%以上の成長事業に育成し、2030年までにオフィスプリンティング、オフィスサービスに続く、第3の収益の柱となる事業とすることを目指す。 ■ 国内での業績・状況 リコージャパンでは、「リコーが発表した国内オフィスサービスの業績の通り、ITサービス、アプリケーションサービスが前年を上回る伸長となった。ITサービスはWindows 11のマイグレーション需要が高く、ここにリコー独自のITサービスを付加し、ITサービス需要を取り込むことができた。また、セキュリティ、テレワーク関連にニーズが高かったことから、スクラムアセットの好調さが継続した。アプリケーションサービスは法改正があった建設、介護福祉業を含め勤怠管理などのスクラムパッケージが好調に推移した」(リコージャパン 取締役常務執行役員 デジタルサービス企画本部 本部長の宮本裕嗣氏)と、今年度の状況を説明する。 そして、DXなどに取り組む顧客企業が増えているものの、対応に手が回り切ってないことから、これらの企業に対する支援を強化する考えを示した。 以前から引き合いが多かったセキュリティに対しては、DDS社と協業した「リコー サイバーセキュリティパック」が業種固有の課題にフィットし、順調に売上が拡大している。これに加え、リコージャパン独自の多層防御提案を行い、企業のセキュリティ対策を強化していく考えだ。 AIについては、2月にオープンした「RICOH BUSINESS INNOVATION LOUNGE TOKYO」の来場者が順調に拡大し、1日あたり3社程度の来場が続いている。こうした施設とスモールスタート、全社での本格導入、プライベートLLM(大規模言語モデル)など、ニーズに応じたAI導入を支援していく体制によって、顧客のAI導入を支援する。 「セキュリティを重視し、プライベートLLMを利用したいお客さま向けに提供しているの当社のオンプレミス版プライベートLLMが、実用にかなう日本語LLMだと評価を受けている」(宮本本部長)。 ■ アプリケーション領域の強化方針 また、アプリケーション領域で中堅・中小企業のDX促進を目的にアプリケーション同士の連携を強化する。 「リコー製アプリケーション、パートナー製アプリケーションの双方を取り扱い、お客さまに合わせたアプリケーションを提供することで、従来よりも便利にはなっているものの、アプリとアプリの間で必要になる手作業が発生している。アプリケーション間のデータ連係による自動化によってDXを加速する。パートナーとともにお客さまの課題にフィットしたソリューションを拡充し、中堅・中小企業のお客さまのDX加速につなげたい」(宮本本部長)。 具体的には、4つの提供価値を提案する。 1つ目は、営業部門・業務部門・経理部門の連携。営業部門では案件や顧客管理をRICOH Kintone plusによって行い、見積書を作成する。業務部門と経理部門ではその見積書データをもとに、基幹システムの販売管理を活用して受注や帳票作成を行い、そのデータをそのまま、MakeLeapsによる請求書発行に利用する。 2つ目は、ITインフラ基盤を強化し、IT資産と従業員をひも付けて管理できるようにするもの。セキュリティについても、さまざまなクラウドサービスのセキュリティ対策をサポートするとした。 3つ目では、社会的課題のひとつである人的資本経営とバックオフィスの業務改革を進める。タレントマネジメントと給与・勤怠管理アプリケーションのデータを連係し、人事情報を一元管理することで、人手不足の解消や人的資本経営につなげていく。 4つ目は多様な業種業務のDXとツール活用支援。現場ごとの課題改善に、RICOH kintone plusのアプリケーション、プラグイン、テンプレートを活用し、DXによる生産性向上につなげていく。 こうした施策を実施する際には、専門知識が不可欠になることから、社内の人材育成制度を強化し、「スペシャリスト認定制度」を24年度中に正式にスタートする。現在、Microsoftエバンジェリスト、kintoneマスター、バックオフィススペシャリスト、AIエバンジェリスト、セキュリティスペシャリストの5つに対し、社内人材を公募した。 「スタッフ部門を含め、社内のどの部署からも希望があればエントリー可能とした。Microsoftエバンジェリスト、kintoneマスターはメーカーの資格制度とリンクし、以前から資格取得者が存在した制度だが、それ以外の3つは新設した資格となる。目玉となるAIエバンジェリストには1387人の応募があり、このうち300人程度が正式な認定者となってくれればと考えている。アプリケーション強化策にも、専門知識を持ったスタッフの伴走が不可欠となる。また、ITは日進月歩で進化するため、毎年、新たに資格を取得するなど、現場でお客さまを支援するのに適した人材強化策としていく」(宮本本部長)。 また、GXに関連したサービスやソリューションの売上が好調なことから、「オフィスプリンティング、オフィスサービスに続く第三の収益源とするべく、体制強化を進める」(リコージャパン 取締役執行役員パブリックサービス本部 本部長の花井厚氏)方針だ。 リコーでは、1976年に当時は水公害対策として環境対応をスタート。それ以来、社内18の事業所をZEB(ネット・ゼロ・エネルギービル)化している。 「GX対応が必要になったもののやり方がわからないというお客さまが多い中、当社の施設を見学してもらうことで、実践方法を理解してもらえる。当社自身の省エネ、創エネ、蓄エネに関する実践とそれにまつわるノウハウを紹介することにより、GXへの取り組み方法が理解できたというお客さまが多い」(花井本部長)。 顧客が拡大しているのは、リコーがMFPなどを導入している建設業、介護福祉、病院、製造業など、「当初は電気料金を削減する目的で話がスタートし、GX商談につながっていくことが多い」という。 また、自治体からの問い合わせも多く、「自治体の場合、新規のお客さまが多い。庁舎のZEB化に加え、地域新電力会社を自治体で開設し、地元企業に売電するといった取り組みなどをお手伝いしている。ロードマップ作り支援実績は39自治体だが、新たに18自治体に提案を行っている。地域の脱炭素実装については、11自治体と追加で4自治体に提案を行っている」(花井本部長)。 強みとなるのは、コンサルティングやロードマップ策定から、事業所・工場のZEB化、太陽光発電などのエネルギー提供までの支援をトータルに行える点にある。 「コンサルだけ、ZEBだけなど一部を提供する企業は多いが、GXに関連する伴走をトータルでできる企業は少ない。当社はトータルに伴走ができる数少ない企業」(花井本部長)とアピールし、さらなる顧客拡大を進めていく。
クラウド Watch,三浦 優子