ライドシェア全面解禁の最大抵抗勢力は公明党
国土交通大臣の反対姿勢
「ライドシェア解禁への最大の抵抗勢力が公明党になっています」と語るのは規制改革会議に関係する民間経営者。4月に始まった「日本版ライドシェア」はタクシー会社にしか参入を認めていないが、これをタクシー会社以外にも広く「解禁」するかどうかの議論が佳境を迎えている。「全面解禁」に向けて法制度の検討を進めるよう主張する河野太郎・規制改革担当相に対して、斉藤鉄夫・国土交通相は「早急に結論を出すべきではない」として反対姿勢を鮮明にしているのだ。 【写真】社会機能を維持できるかどうかの瀬戸際の人口減少 ライドシェアの解禁を巡っては、議論する前の「検証」という位置付けで、4月からタクシー会社にのみ解禁された。「日本型ライドシェア」と呼ばれているものの、実際には欧米で普及しているライドシェアとはまったく別物。ドライバーは普通免許でOKだが、原則、タクシー会社との雇用契約が必要で、運行管理や事故対応などもタクシー会社が行うことになっている。一方で、運行できるのは、決められた地域の特定の時間帯で台数も限られている。要はタクシー会社の人手不足を補う非正規労働という色彩が強い。気軽に空いた時間をライドシェア・ドライバーとして稼ぐという世界のモデルからはかけ離れている。 5月27日に斉藤大臣は、河野大臣と面会。その後記者団の取材に応じた。そこで「何十年もかけて培ってきた公共交通の適正な事業運営や、運転者の労働環境に大きな影響が生じる」としたうえで、「導入しないで済むことがベストであると申し上げてきた」と、解禁議論に待ったをかけた。 一方、5月29日には、自民党の小泉進次郎元環境相が会長を務め、立憲民主党の馬淵澄夫元国交相などが名を連ねる超党派の「ライドシェア勉強会」メンバーが国交省に斉藤大臣を訪ね、ライドシェアの法整備について、年内にも結論を出すよう求める提言を手渡した。自民党にはタクシー・ハイヤー議員連盟もあり、その所属議員らはライドシェアに強く反対。意見が対立している。また、野党の中にも、タクシー運転手らの労働組合とのつながりが深い議員はライドシェア解禁には反対に回っている。自民党も野党も、意見を一本化できない状態が続いているわけだ。 6月には、今後の改革方針を示す「骨太の方針」の閣議決定が控えているうえ、規制改革の方針などもデジタル行財政改革会議などで打ち出される。ここでライドシェアの全面解禁に向けた方向性がどう示されるかが大きな焦点になっている。自民党の場合は、推進派反対派双方が折り合う様子はなく、最終的には岸田文雄首相の決断いかんによると見られている。