北朝鮮・張成沢氏失脚の真相 早稲田大学・重村教授に聞く
―――軍が張成沢失脚計画を進めだしたきっかけは? 北朝鮮の柳敬(ユ・ギョン)保衛部第一副部長は2011年に、張成沢と韓国情報機関のつながりを裏付ける証拠を入手した。張成沢は2000年から、韓国の情報機関と関係を持っていた。張成沢は、柳敬がこの問題を金正日に報告する前に手を打ち、逆に柳敬を「スパイ罪」で処刑した。この事件以来、軍は張成沢に復讐するタイミングを伺っていた。 ―――崔竜海(チェ・ヨンへ)総政治局長が張成沢を裏切ったとの声もある。 張成沢と崔竜海との不仲はいまにはじまったことではない。映像でもほとんど喋っていない。責任を押し付ける張成沢に対し、崔竜海は反感をもっていた。 ―――北朝鮮が今回、張成沢の粛清現場をテレビで公開した理由は? 北朝鮮の国民は今回の騒動に際し、金正恩の権力低下を疑った。金正恩は張成沢失脚の現場をテレビで公開することで、国民に自分の権力を示した。 ―――今後の北朝鮮はどうなるか。 張成沢勢力の排除がおこなわれる。党と政府をたばねていた張成沢が失脚し、軍の力が強くなる。金正恩は軍の傀儡になる。軍が利権を取り戻し、経済政策の資金がなくなる。現在、実質的に軍を握ってるのは、呉克烈(オ・グッリョル)国防副委員長と金英徹(キム・ヨンチョル)偵察総局長。この二人に近い人材がポストを得る。 --------- 重村 智計(しげむら としみつ) 1945年、中国に生まれる。早稲田大学卒業。1971、毎日新聞社に入社、79年から85年までソウル特派員。ワシントン特派員時代には、米朝核交渉で数々の国際的なスクープを報じる。この間、高麗大学大学院、スタンフォード大学へ留学。毎日新聞論説委員を経て、早稲田大学国際教養学部教授。最新刊は 『激動!北朝鮮・韓国そして日本 歴史的必然と日本の選択』(実業之日本社)。『月刊 WiLL』に『朝鮮半島通信』を連載中。