子どもに託す?墓じまいする?誰もが知っておくべき「お墓の引き継ぎ方」【司法書士が解説】
相続には「お墓」や「仏壇」も含まれると思いがちですが、実はこれらは相続財産には含まれません。そのためお墓などを引き継ぐ人は個別に決めなければなりません。本記事では『ふと、終活のことを考えたら最初に読む本』(日本実業出版社)から一部抜粋し、お墓などの引き継ぎ方やするべきことをご紹介します。 都道府県「遺産相続事件率」ランキング…10万世帯当たり事件件数<司法統計年報家事事件編(令和3年度)>
登場人物 あんみつ先生(45歳)…司法書士。都内の会社を退職し、実家のある田舎町にUターン。司法書士事務所を開業し、おもに相続と成年後見を中心に業務をしている。また、副業で終活セミナーの講師もしている。 吉田小春さん(65歳)…専業主婦。あんみつ先生のご近所さん。子供2人はすでに独立し、現在は夫と気ままな2人暮らし。 吉田健二さん(70歳)…小春さんの夫。長年勤めた会社を定年退職し、家で趣味を楽しみ、のんびり暮らしている。
相続財産には含まれない「お墓」や「仏壇」の引き継ぎ方
吉田:吉田家のお墓を建てたら、将来、誰に引き継がせましょうか? 小春:子供たちは“財産”とは思わないでしょうから、難しいモンダイよね。 先生:実は、お墓や仏壇などは「祭祀財産」といって、不動産や預貯金などの「相続財産」には含まれないんですよ。 小春:なるほど。たしかに墓地や仏壇って、他の財産とちょっと違う感じよね。 「祭祀財産承継者」を決めよう お墓は「祭祀財産」といい、お墓を継いだ人のことを「祭祀財産承継者」といいます。祭祀財産は相続財産には含まれず、相続税の対象でもありません。具体的には墓地、墓石、仏壇、仏具、家系図、遺骨などが祭祀財産に該当します。 故人の遺骨を誰が引き取るか、お墓を誰が管理するのかなどについて、相続人どうしがモメることはよくあることだと思います。そういう意味では、祭祀財産を相続財産に含めないことに違和感を持つ人も多いかもしれません。 しかし、祭祀財産を相続財産に含めてしまうと不都合があるのです。実際に、お墓や仏具、遺骨などを、不動産や現預金などと一緒に遺産分割の対象とするのは、一般的な常識には合いません。お墓や遺骨などを分割して、何人かで分け合うというのは現実的ではないと考えられます。 祭祀財産の承継者は、原則として1人です。その1人は相続人のほか、相続人以外でもかまいません。相続放棄をした人でも問題なく、祭祀財産の承継者になれます。また、友人や内縁関係の妻などが承継をすることも問題ありません。 祭祀財産承継者の指定は口頭でもかまいませんが、遺言やエンディングノート等に書いて指定するほうがいいでしょう。 承継者には、寺院なら檀家料等の支払いや、法事等を主宰する負担もあります。お墓の管理責任を負担する立場であることを考えると、遠方に住む人や体力的に厳しい人、そもそもやる気のない人などを一方的に指定しても現実的ではないと考えられます。この件については、事前に家族でよく話し合うことが重要です。 なお、祭祀財産の承継者は、自分で決めなければその地方の慣習によって決まります。それでも決まらない場合は、家庭裁判所に決めてもらうことができます。