平均年収700万円の顧客に対して年収700万円向けのサービスは絶対ダメ…真のターゲットを求める数字の扱い方
新商品やサービスのターゲット設定をするとき、数値はどう用いるべきか。経営コンサルタントの斎藤広達さんは「例えば住宅相談に来る6人の平均年収が700万円だった場合、実際にその中に年収700万円の人がいるとは限らない。少ないサンプルで計算した『平均』をビジネスプランのベースにしてしまうと、まったく効果のない施策になってしまいかねない。世の中には平均値が溢れているが、ビジネスパーソンなら平均値を見たときにまず、『その数字は偏っていないか』『サンプルの数は十分か』などを疑うべきだ」という――。 【図表】ある会社の有給休暇の取得率 ※本稿は、斎藤広達『頭のいい人が使っているずるい計算力』(PHP研究所)の一部を再編集したものです。 ■「みんな」に踊らされないための平均値との付き合い方 社内では、「多くの」「みんな」「いつも」「平均的に見て」といったセリフが当たり前のように飛び交っています。一見すると、これらの言葉には説得力があるように感じられますが、はたして本当にそうでしょうか。 おそらく、「ほかの言葉はあいまいだけど、平均だけは計算して出しているのだから、ある程度信用できるはず」と考える人もいるでしょう。 本当に「平均」は正しいのか、考えてみます。 ---------- 【例題1】 テレビで、あるダイエットサプリを使った5人の体験者が効果を語る、というCMが頻繁に流れているのを見たAさん。CMによると、サプリを使った結果として全員の体重が平均で5kg減ったらしく、試してみたいと思いました。 でも、心のどこかでは「本当に正しいのかな?」という疑問も捨てきれません。 このサプリは本当に効果があるのでしょうか。 ---------- 体験談からサプリの効果を確かめるには、5人の体重の増減を確認します。 Aさん:-4kg Bさん:-3kg Cさん:-6kg Dさん:-5kg Eさん:-7kg 上記のように体重が変動していた場合の平均は、 4kg+3kg+6kg+5kg+7kg=25kg 25kg÷5人=5kg よって、-5kgの減量に成功しているとわかります。 これなら、確かに「みんなちゃんと体重が減っているから、効果があるのかも」という気持ちになるかもしれません。 しかし、もし5人の体重の増減が以下の結果だったらどうでしょう。 Aさん:+1kg Bさん:-7kg Cさん:+2kg Dさん:-4kg Eさん:-17kg これでも平均値は同じ-5kgです。 ですが、内訳を見るとEさんが-17kgというすさまじいダイエットに成功している一方で、サプリを飲んでいても体重が増加している人が2人もいます。 これでは、「必ず効果が出る」とは言えません。同じ平均-5kgでも、まったく印象の違う結果になるパターンもあるのです。 これが平均の歪みであり、多くの人が騙されるポイントです。