相続税申告の10人に1人の確率だが…誰が「相続税の税務調査」に選ばれるのか?【税理士が解説】
相続税の税務調査は相続税申告をした人全員ではなく、おおよそ10人に1人の確率で行われます。では、どのような人が調査対象になるのでしょうか? 【ランキング】都道府県「遺産相続事件率」…1~47位
相続税の税務調査…10人に1人が85.7%の確率で追徴課税
国税庁の「平成30事務年度における相続税の調査等の状況」によると、平成28年に発生した相続を中心に12,463件の実地調査が行われたと発表されています。同年に発表された国税庁の別資料「平成30年分相続税の申告事績の概要」によれば、この年に相続税申告書の提出をしたのは116,341人(税額がある申告件数)でした。 つまり、相続税申告をすれば10.7%の確率、おおよそ10人に1人は相続税の税務調査が行われるということです。これは他の法人税や所得税等の税目に比べて高い割合となっており、多くのご家庭に相続税の税務調査が入っていると言えるでしょう。 相続税の税務調査で追徴課税になる確率は85.7% 先述の国税庁の資料によると、相続税の税務調査の結果「申告漏れ等の非違があった件数」は10,684件(全体の85.7%)と発表されています。言い換えれば、「相続税の税務調査対象者の85.7%が追徴課税された」ということです。
相続税の税務調査の概要…時期や時効について
「相続税の税務調査」と聞くと、何だかとても悪いことをして調べられるイメージをされるかもしれません。ただ、実際はきちんと相続税申告をしていても税務調査が行われることもあるので、あまり怖がらずに冷静な対応を心がけましょう。相続税の税務調査には「強制調査」と「任意調査」の2種類がありますが、大半の税務調査が後者の「任意調査」です。 ■強制調査 国税通則法(旧国税犯則取締法)に基づいて、悪質な脱税犯の家で家宅捜索をする厳しい調査(マルサのイメージ)。 ■任意調査 税務署から事前連絡があり、当日は質問に答える形式の調査。ただし不当な拒絶はできない。 相続税の税務調査は事前に税務署から連絡がある 相続税の税務調査の対象者に選定されると、事前に税務署から連絡があります。 ・相続税申告を税理士に依頼していた場合…担当税理士に連絡 ・相続税申告を自分でした場合…相続人に連絡 この連絡の時点で具体的な指摘や内容の通知は行われず、実地調査を行う日程を決めるにとどまります。税務調査の連絡が来ると不安な気持ちになる方が多いと思いますが、過度に心配しなくてもよいでしょう。 相続税の税務調査の時期は1~2年後の「秋」が多い 相続税の税務調査の時期は、相続税申告をした1~2年後の秋頃が多いです。税務署には日々たくさんの相続税申告書が提出され、それを順番に審査していくため、申告後すぐには税務調査ができないのです。 また税務署は7月に大きな人事異動があり、人事異動後の8~11月が調査先選定のピーク時期となります。8~11月に選定しスタートした税務調査を、翌年の6月までに終結させるように動いていくため「秋」が多いのです。 相続税の税務調査の時効は5~7年 相続税申告にも時効(除斥期間/じょせききかん)があり、ケースによっていつまでが対象期間なのかが異なります。 ・相続税の時効…相続税の法定申告期限から5年 ・故意の脱税行為や無申告の場合の時効…相続税の法定申告期限から7年 この相続税の法定申告期限とは「相続発生を知った翌日から10ヵ月以内」のことで、被相続人が亡くなった日ではないのでご注意ください。また相続税の申告期限は、被相続人の死亡を知らなかった場合などは考え方が異なります。