バイデン氏、不安に拍車 討論会で言葉詰まり、声かすれ…党内に交代論 トランプ氏は虚偽30件超
【ワシントン古川幸太郎】11月の米大統領選に向け、初の直接対決となった27日の候補者討論会。民主党のバイデン大統領(81)は懸念されていた高齢不安を払拭しようとしたが、張りのない声で何度も言葉に詰まる姿が逆に不安を高める結果に。共和党のトランプ前大統領(78)も虚偽交じりの持論を繰り返し、議論は最後までかみ合わなかった。主催者のCNNテレビは「劣勢に立ったバイデンと、虚偽を繰り返したトランプ」と評した。 バイデン氏は青、トランプ氏は赤と、それぞれ党カラーのネクタイを締めて登壇。握手もせず、視線も合わせないまま討論は始まった。 バイデン氏は序盤からつまずいた。メディケア(高齢者向け公的医療保険)を拡大した政権実績を強調しようとした際、誤って「メディケアを退治した」と発言。不法移民対策でも言葉に窮するなどしたバイデン氏に対し、トランプ氏は「彼は自分が何を言ったのか分かっていないと思う」と首をかしげた。 初の討論会に備え、バイデン氏は約1週間前から大統領山荘「キャンプデービッド」にこもって練習を重ねてきた。だが、討論会では声がかすれ、終始精彩を欠いた。 民主党内からは「バイデンでは戦えない」との声が上がり、くすぶっていた「バイデン降ろし」の動きが再燃する。オバマ元大統領の選挙アドバイザーはAP通信に「バイデン氏はパニックに陥っていた。今後、続投するべきかどうかについての議論が交わされるだろう」と語った。 討論会後、バイデン氏は記者団に「自分はよくやった」と語り、選挙戦からの撤退を否定。「喉に痛みがあった」と弁明し、こう訴えた。「うそつきのトランプと討論するのは難しい」 ■ ■ 対するトランプ氏は身ぶり手ぶりを交えて、力強さをアピールした。ただ「移民が米国に入国し、女性を殺害している」「バイデンは税金を4倍に増やしたいと思っている」など根拠がない虚偽主張が目立った。 外交問題では、ロシアのウクライナ侵攻について「大統領選に勝利すれば、就任前に解決してみせる」と主張。自分が大統領だったら「プーチン大統領は決して侵攻しなかっただろう」とも語った。 一方、前回大統領選で敗北を認めていないトランプ氏に対し、司会者が「誰が勝っても、選挙結果を受け入れるか」と質問すると回答をはぐらかし、3度目の同じ質問でようやく「公正で合法な選挙なら受け入れる」と答えた。 CNNテレビのファクトチェックによると、トランプ氏の虚偽発言は30件以上だったのに対し、バイデン氏の虚偽または誤解を招く主張は9件だった。 ミシガン大ディベート研究所のアーロン・コール所長は「バイデン氏は大統領選の討論会史上、最悪のスタートを切った。次の討論会までにバイデン氏が名誉挽回するのは難しいだろう」と語った。