iPS細胞から作った目の網膜細胞の移植、「先進医療」として申請へ…移植細胞の定着しやすさに期待も
iPS細胞(人工多能性幹細胞)から作った網膜の細胞を移植する臨床研究を進めてきた神戸市立神戸アイセンター病院は、早ければ来年1月にも、この治療を入院や検査の費用に公的保険を利用できる「先進医療」として厚生労働省へ申請することがわかった。認められれば、iPS細胞を使った細胞移植治療では初となる。
神戸アイセンター病院の栗本康夫院長らのチームは、網膜を支える色素上皮細胞の層が変性して視力が低下したり、視野の中心部がゆがんだりする「網膜色素上皮不全症」の患者の目に、iPS細胞から作った網膜色素上皮細胞を、髪の毛ほどの太さのひも状に加工して移植する治療法の開発を進めている。
この方法は手術が比較的容易で、移植した細胞が定着しやすいと期待されている。これまでに30~60歳代の男女の患者3人の網膜に移植を行い、安全性などが確認できた。見え方が改善した人もいるといい、栗本院長らは6日から大阪市で開かれる学会で、3人の治療後の詳しい経過を報告する。
先進医療は、まだ実施例が少なく、保険適用されていない先駆的な治療や検査について、費用負担を抑えることで実施例を増やし、将来の保険適用を目指す仕組みだ。治療そのものの費用は患者や医療機関が負担するが、入院費など関連する医療費の一部は公的保険を使うことができる。
チームは、移植する細胞の数を増やして患者15人に実施する新たな臨床研究を計画している。
厚労省の再生医療の専門部会は昨年以降、この計画について先進医療の申請を認めるかどうかの検討を行っており、申請後は同省の先進医療に関する専門家会議で議論される。
栗本院長は「先進医療になれば多くの施設で移植ができるようになり、より一般的な治療に近づく」と話している。