朝ドラ『虎に翼』 前作『ブギウギ』との比較で見えてくる、シングルマザー それぞれの母娘関係
スズ子と寅子、それぞれの子育ての変化
スズ子と寅子の似ているようで異なる子育て環境と、それぞれに寄せられる視聴者からの声を見ていると本当に子育てには正解というものがないのだと気づかされる。だが正解やマニュアルがないからこそ、スズ子も寅子も自分らしいやり方で少しずつ子どもへの向き合い方を変化させていった。 スズ子は愛子に反抗的な態度をとられても、「それならば」といきなり距離を置いて仕事に没頭することはしない。そのかわり、これまで以上に真っ直ぐに「ワテの子でいてくれてありがとう。大好きやで」と気持ちを伝えるようになった。口喧嘩が多く言葉ですれ違うことが多かったスズ子と愛子だが、結果的に心の距離を近づけたのも”言葉”であった。 そして寅子も新潟に引っ越したからといって、いきなり優未とのコミュニケーションが活発になったわけではない。ただこれまで無意識の内に自分の理想を押し付けていたことを反省し、優未の考えや価値観を尊重するようになった。「友達がいない」と言った優未に無理やり友達を作らせるのではなく、「心の拠り所は友達じゃなくていい」と伝えたのもその一つだろう。寅子が裁判官として個人の尊厳を追求してきたからこそ、優未と一人の人間として対等に向き合っているのが伝わってくる。 主人公が母になる過程を見届けられるのは、朝ドラの醍醐味の一つだ。色々な親子の形を示し続ける朝ドラの歴史の中で、『虎に翼』寅子と優未はこれからどんな親子になっていくのだろうか。自分自身の父母や子、これから出会うかもしれないまだ見ぬ家族のことを考えながら、二人の成長を見届けていきたい。
音月 りお