朝ドラ『虎に翼』 前作『ブギウギ』との比較で見えてくる、シングルマザー それぞれの母娘関係
2024年前期の朝ドラ『虎に翼』。夫・優三(仲野太賀)を戦争で亡くしたヒロイン・寅子(伊藤沙莉)は、第16週から娘の優未(竹澤咲子)と新潟で二人暮らし中だ。そして前作の朝ドラ『ブギウギ』でも、事実上の夫に先立たれたヒロイン・スズ子(趣里)が娘の愛子(このか)と二人暮らしをしていたのを覚えているだろうか。シングルマザー、そして著名人という共通点を持つ二人だが、子育てに関するスタンスは真逆といっていいだろう。今回は、”親子関係”に注目しながら『虎に翼』と『ブギウギ』を比較してみたい。 【関連写真】『虎に翼』石田ゆり子のクランクアップに思わず涙の伊藤沙莉 『虎に翼』のヒロイン・寅子の職業は裁判官。日本初の女性弁護士として注目を浴びるも妊娠をきっかけに仕事を辞め、現在は新潟地家裁、新潟地方裁判所判事として働いている。転勤前に東京で働いていたときは今よりも目が回るような忙しい日々。娘・優未との時間がなかなか取れず、家のことは同居していた友人で義姉の花江(森田望智)や弟の直明(三山凌輝)に任せっぱなしであった。 一方『ブギウギ』のヒロイン・スズ子の職業は歌手。”ブギの女王”と呼ばれ、人気絶頂の頃に娘の愛子を妊娠。大きなお腹を抱えたままステージに立ち続けた姿は、当時の観客はもちろん視聴者の目にも鮮烈な印象を残したことだろう。国民的スターだったスズ子は寅子と同じく毎日多忙な日々。だが度々現場や稽古場に幼き愛子を連れていき、周囲が心配するほどにワンオペ育児に励んでいた。 スズ子は、自分自身の生い立ちが複雑だったこともあり「とにかく自分の手で育てたい」と長らく人に頼ることをしなかった。半ば無理やり家政婦の大野(木野花)と共に生活することになったものの、娘に対してはやや過干渉な印象だ。愛子に友達がいないと分かれば同級生を招いて誕生日パーティーを開催し、何かと反抗されても「愛子!愛子!」と名前を呼び続ける。視聴者からは「子離れした方がいい」と声が寄せられるほど、分かりやすく愛情を注いでいたのだ。 寅子はと言うと、一家の大黒柱として仕事に熱中している時期が長くいつの間にか優未との溝ができてしまっていた。それに加えて完璧主義な寅子は、優未や他の家族にも完璧を求める節があり、優未は寅子の前で”いい子”を演じるように。視聴者からも「もっと優未とコミュニケーションを取って」「優未を気にかけてあげて」と心配の声が寄せられていた。新潟で二人暮らしを始めてようやく心の距離が近づいてきたところだが、航一(岡田将生)と優未の親密具合につい嫉妬してしまうほど、まだどこか寅子と優未には一定の距離感があることがうかがえる。