ビッグバン進行中 変わりゆく福岡市・天神の「今」を撮った
変わらないものも…
ワンビルがそびえる天神交差点には、行き交う人や車を見守る「天神地蔵」が立っている。1979年、福岡県警中央署の巡査(当時28歳)が、信号を無視した暴走族のオートバイから歩行者を守ろうとして亡くなった。 巡査を悼んで設置された地蔵は、交通安全を願う地域の象徴的な存在に。ボランティアの女性らによって、服や帽子が取り換えられ、周辺の清掃も続けられてきた。
しかし今年1月、地蔵の上部が破損しているのが見つかり、地元町内会が被害届を提出。報道で被害を知った市民らの寄付で4月、元通りの姿に修復された。町内会長の藤木敏一さん(74)は「ずっと見守ってくれたお地蔵さまが、これからも市民に愛される存在であってほしい」と願う。
大規模な再開発が進む天神で、変わらず歴史を紡ぎ続ける建物もある。国の重要文化財・福岡市赤煉瓦(れんが)文化館もその一つだ。 日本生命保険九州支店として1909年に完成した建物は、煉瓦の赤い壁と屋根のドームが印象的だ。博多区の歩道橋の上から超望遠レンズで切り取ると、戦禍を免れたレトロな建造物と建設中の高層ビル群の情景が重なり、1世紀を超える天神の今昔が1枚の写真に凝縮されているように見えた。
未来に広がる景色は
好天に恵まれた撮影会。ガラス張りのビル壁面や広告窓が、通行人らの姿を鏡のように映し出していた。こうした映り込みを表現できるのはビル街ならではだ。 通り過ぎる路線バスの窓に、規制緩和の適用第1号となった天神ビジネスセンターの特徴ある壁面が映り込んだ。見過ごしそうになる一瞬も、速いシャッタースピードで写真に撮ると、光の角度や強さが現実に妙味を加え、強いコントラストを帯びた空間をつくりだす。
新しい時代のリズムを刻み始めた街の表情を追っていると、現代アート作品のような風景に出会うこともある。イムズがなくなって視界が大きく開けた交差点のそばでは、ガラス窓に市役所と周辺の建物が映り、左右対称のパノラマを構成していた。
変化の歩みを止めない天神。福岡市によると、2026年までに70棟、30年代までに約100棟の新築が見込まれている。思い出と一体になった街並みが変わってしまうことに郷愁を禁じ得ないが、未来にどんな光景が広がっているのか楽しみでもある。
読売新聞