脳の権威が断言「AIを使ってもバカにならない」 米国脳トレーナーが教えるAIとのつきあい方
■世界的心理学教授の見解 ベストセラー書籍『やり抜く力』(神崎朗子訳、ダイヤモンド社)の著者で心理学教授のアンジェラ・ダックワースは、『ロサンゼルス・タイムズ』に掲載されたAIに関する文章でこう述べている。 いわく、AIは「知ることと考えることがいかに別物であるかを見事なまでに体現している。“知ること”は事実を記憶にとどめることであり、“考えること”はそうした事実に合理的な理由を当てはめることである。チャットボット[注 AIを利用して自動応答を行うプログラムやシステム]は、インターネット上のあらゆることを知っているが、そのじつ考えることは一切していない。
言い換えれば、教育哲学家のジョン・デューイが1世紀以上前に“反省的思考”と呼んだこと、すなわち、“信念や知識の類いだとされるものを、それを支える根拠に照らして能動的に、持続的に、また注意深く考えること”は、AIにはできないということだ」。 「テクノロジーはずいぶん前から、暗記した知識の重要性を軽視している。周期表の14番目の元素を、世界で10番目に長い川を、アインシュタインの誕生日を、検索すればわかる時代になぜ覚えるのかというわけだ。その一方で、考えることの経済的インセンティブは、知ることのそれとは対照的に高まっている。現代の平均的な学生が、1世紀前の学生より思考力では勝るのに、知識は少ないとしても驚くに当たらない」
何年か前のことだが、グラフィックデザイナーである僕の友人が、簡単にデザインができるという触れ込みのコンピュータアプリを批判していた。仮にもデザイナーを名乗るなら、コラージュのような物理的な技能を学んで、上っ面ではないデザインセンスを磨くべきではないのかと言うのだ。 ところが、渋々ながらその手のアプリを初めて使ったとき、友人はそのアプリが思ったほど使えないことに気づいた。自分の能力やアイデアを総動員しなければ形にならなかったのだ。アプリがやったのは、ワンクリックかそこらでできるごく単純なタスクが多く、デザインの創造的な部分は、もっぱら彼女がひとりで作り上げた。