「苦しい思い、伝える場所を…」全国で初の “認知症行方不明者”家族団体設立
家族間でも捜索に温度差「何度も衝突」
会見では長期行方不明者の家族を対象に実施したアンケート調査の途中結果についても、報告が行われた。 回答を寄せた行方不明者家族の声のなかには「家族や親戚との関係が悪くなった」との声もあったという。 江東さんは自身の体験をもとに以下のように付け加えた。 「家族や親戚であっても、行方不明になった家族を探す気持ちの温度差はそれぞれです。 私も実際に、父を一生懸命に探すうえで、母から『父を探してほしいけど、私の生活も大事にしてほしい』『区切りをつけて欲しい』と言われるなど、何度も衝突してきました。 一方で『このまま、待ち続ける日々が続き、区切りを付けたくても付けられないままで、自分の人生が終わっていくのかな』と母がこぼしたこともあります。 私と同じく、母にも、つらい気持ちを話せる人がいない、相談しあえる場所が無く、そうした場所が必要だと感じたので、やはり団体の設立が必要だなと感じました」 ほかにもアンケートの回答には、行方不明者の年金受給が止まるため、金銭面で困っているという悩みや、行方不明当時の通話履歴の開示を求めても、本人でないために断られたといった声が寄せられたという。 「認知症基本法では、認知症当事者や当事者家族らの意見を聞くよう定められています。今後は団体の代表、当事者家族として、意見を発信していきたいです。 団体を立ち上げたばかりで、まだまだ多くの課題はありますが、少しずつでも変えるべきことを変え、伝えるべきことを伝えていければと思います」(江東さん)
「当事者の声集め、1人でも救われれば」
会見には江東さんから相談を受け、団体や個人のバックアップを行ってきた「認知症介護研究・研修東京センター」の永田久美子氏も出席。「認知症行方不明者の問題は長年続いている」と指摘したうえで、団体設立の意義について次のように話した。 「認知症で行方不明になって、見つからないままの人が毎年200人以上いることはあまり知られていません。そして、その200人の家族ひとりひとりが長い時間、苦しんでいます。 認知症は医療や介護、福祉分野での問題として捉えられてきましたが、保険の問題や、行方不明者の所持している車の廃車問題など、想像以上に行方不明者家族の抱える問題は多岐にわたります。 また、これまでの行方不明者を防ぐための取り組みは、当事者抜きに進められがちでもありました。ですが、体験していないと分からないことがたくさんあります。当事者の声を集め、実態を知ってもらい、そして1人でも救われる家族がでてくれば、大変意義があるのではないでしょうか」(永田氏)
弁護士JP編集部