同性カップルの住民票に「夫(未届)」と事実婚表記 長崎・大村市「内縁の夫婦に準ずる」
長崎県大村市の市役所が5月2日、男性カップルに対し、続柄に「夫(未届)」と記載した住民票を交付したことがわかった。異性カップルの事実婚ではよく使われる表記だが、同性カップルでの適用は全国初のケースとみられる。 男性カップルは松浦慶太さん(38歳)と藤山裕太郎さん(39歳)。2018年から兵庫県尼崎市で同居を始め、「神社で結婚式を挙げたい」と同性カップルの挙式ができる神社を探していた(本誌22年10月7日号に登場)。「結婚は男女がするもの」と断られ続けたが、尼崎えびす神社が対応し、23年6月に挙式。24年3月末に藤山さんの実家がある長崎県に転居し、パートナーシップ宣誓制度(LGBTQカップルに対して自治体が「結婚に相当する関係」とする証明書を発行し、サービスや社会的配慮を受けやすくする制度)を導入している大村市で生活を始めた。
当初は同じ住所で別々の世帯としていたが、転職などで公的保険や補助金申請が必要になり住民票で2人の家族関係を証明したいと、5月2日に世帯を一つにする手続きを申請した。大村市は「戸籍の関係で難しい」と、松浦さんを世帯主として藤山さんを「縁故者」とすることを提案したが、松浦さんが事実婚の異性カップルも戸籍は同一でないことを指摘したところ、市側は担当者間で協議し、2人の関係は「内縁の夫婦に準ずる」と判断。2人とも独身であることやパートナーシップ宣誓制度の受領証を所持していることを確認し、同日、藤山さんの続柄を「夫(未届)」として世帯合併を受理した。 大村市役所市民課は「パートナーシップ宣誓制度導入時点では住民票表記のことは想定していなかったが、今回の提起を受けて担当 者間で話し合い、いけるだろうと判断した」と説明。同市のパートナーシップ宣誓制度の受領証があれば他のカップルも同様に対応するという。市に寄せられた反応は「賛否両論あるが、今のところは、柔軟な対応をしたと評価する『賛』の声が多い」とのこと。 5月28日の記者会見で、松浦さんは「受理してくれるとは思わなかったので大変驚き、小躍りするくらい嬉しかった。パートナーシップの証明書をもらったときより断然嬉しい。これまで『夫』と書いてもらった書類は一つもなかったので本当に現実なのかと夢の中にいるような気持ちだった。このような寄り添った対応をしてくださった大村市に心から感謝している」と喜びを表明。藤山さんも「嬉しかった。自分たちを後押ししてくれるというか、ここに引っ越してよかったなと思った。同じような自治体が増えてくれたらいいなと思っている」と述べた。