[MOM4821]柏U-18MF加茂結斗(1年)_「ボールをもらえば何かはできます」 根拠のある自信を携えた謙虚で強気な15歳、躍動中!
[高校サッカー・マン・オブ・ザ・マッチ] [9.7 プレミアリーグEAST第13節 柏U-18 2-1 大宮U18 日立柏総合グランド] 【写真】ジダンとフィーゴに“削られる”日本人に再脚光「すげえ構図」「2人がかりで止めようとしてる」 ひとたびこの男にボールが入ると、ピッチ上には何かが起こりそうな雰囲気が漂い始める。次に繰り出すべきはパスなのか、ドリブルなのか、それともシュートなのか。あらゆる選択肢を自身の中で吟味し、ゴールへの道筋を逆算して、その時の最適解を導き出していく。 「2年生だからとか、3年生だからとか、そういうことを言っていてはやっていけないと思うので、ピッチに入ったら学年は関係ないですし、自分も発言しなくてはな、と。毎試合意識しているのは『自分がやってやろう』ということですね。そうじゃないと生き残っていけないと思っています」。 柏レイソルU-18(千葉)の攻撃に鮮やかな彩りを加えていく、15歳の高性能アタッカー。MF加茂結斗(1年=柏レイソルU-15出身)は自分のど真ん中に根拠のある自信を携えて、さらに高いステージへと駆け上がる準備を整えている。 「ボールをもらえば何かはできますし、そこが自分の特徴だと思っています」と言い切れるキャラクターも面白い。柏U-18の8番を託されている、ユースに昇格したばかりの高校1年生。加茂結斗のことだ。 大宮アルディージャU18と対峙したプレミアリーグEAST第13節。前節に続いてスタメン起用されると、立ち上がりからフルスロットル。7分に相手のGKにファインセーブを強いるシュートを打ち込めば、その1分後にもクロスバー直撃のフィニッシュを。「個人としてもチームとしてもうまく最初の流れに入れたかなと思います」と早々に手応えを引き寄せる。 チャンスメイクでも存在感を放つ。9分には丁寧なスルーパスでFW吉原楓人(3年)の決定機を演出したかと思えば、28分には巧みなピンポイントクロスから、FW澤井烈士(2年)がGKのファインセーブに阻まれたビッグチャンスをお膳立て。得点を生み出しそうな空気を纏っていく。 32分。「自分にボールが入った時に、ターンしてシュートという選択肢もあったんですけど、上がってくる選手が見えたので、そこに出しました」と冷静に右へ展開した加茂は、MF戸田晶斗(3年)の折り返しをそのままシュート。DFに当たったボールをFW吉原楓人(3年)がプッシュして、先制点を叩き出す。 圧巻は1-1と追い付かれて迎えた、後半20分の一連だ。MF長南開史(中学3年)からボールを受けた時、周囲の状況は完璧に把握していた。「最初はターンしようか後ろに1回持ち出そうか迷った時に、相手の気配をそんなに感じなかったのでターンしてみようと。相手の6番の選手が見えたんですけど、結構ガッツリ来ていたので、間合いを見た時に『かわせるな』と思いましたし、『ダブルタッチをしよう』というのも感覚的にありました」。寄せてきたマーカーをダブルタッチで華麗に剥がすと、視界の先に“獲物”を捉える。 「楓人がうまく斜めに走ってくれていたので、『スペースに流せば決めてくれるかな』と。アレは自分的にも良いプレーだったなと思います」。パーフェクトなスルーパスを引き取った吉原が、GKとの1対1も確実に制し、ゴールを陥れる。「加茂くんのパスが良かったので、僕はそんなに何もしていないです(笑)」と殊勲のスコアラー。結果的にこれがこの試合の決勝点。2得点にしっかり絡んだ加茂の活躍が、上位追撃という意味でも重要な白星に結び付いたことは語り落とせない。 既に中学3年生だった昨シーズンのうちにプレミアデビュー。本人は「ちょっと遠慮してしまっている部分があって、あまりチャレンジができなかったです」と振り返りながら、8試合に出場して2得点を挙げるなど、センセーショナルな活躍を披露したものの、U-18へと昇格した今季の前半戦はケガに泣かされる格好となり、なかなか自身の実力を発揮する場へとたどり着けない。 だが、そのマインドは普通の15歳と一味違う。「中3の時の高円宮杯が終わった時にケガしてしまって、復帰まで3,4か月ぐらい掛かったんですけど、自分の中で最初はプレミアリーグに出られないことはわかっていたので、正直焦りとかヤバいという想いはなかったですね」。然るべきタイミングで勝負に出ればいい。そう腹を括って、丁寧に実力を積み上げていく。 フォーカスしたのは身体づくりだ。「自分が復帰した時に、すぐに試合に出て、チームの中心になるためにはどうしたらいいかと考えた時に、まずはトレーナーの方や先生に言われたことをやろうと。技術面のことはできないので、筋力アップを考えて体幹や筋トレも結構やりましたし、体重も3キロぐらい増えました」。 「あとは下半身の強化も結構やっていたので、今は動きもそうですし、アジリティで負けていないなということもありますし、体力面でも今日も90分やれたので、徐々に運動量も上がってきたなと。無駄な時間ではなかったと思います」。地道な努力を重ねられる才も持ち合わせているというわけだ。 最近その存在を意識しているのは、EURO王者にも輝いた“1歳年上”の世界的なスターだという。「(ラミン・)ヤマルの動画を見ていますね。世界のトップクラスの選手の中では年齢的にも近い存在なので、よく見ています。もちろん『凄いな』という感心もありますけど、『自分もやってやらないとな』とは思っています」。 景気良く出てくる強気なフレーズ。それでも、分別のない自信家というわけではない。「自分は自信満々というか、過信ではないですけど、自信がないとやっていけないと思います。でも、いつも藤田さん(藤田優人監督)から『自信と過信は紙一重だ』と言われているので、過信せずに、自信も捨てずに、良い塩梅でやっています」。謙虚であることの意味を教えてくれる指揮官の元、のびやかに成長を続けていく。 たどり着くべき場所に立つ自分のイメージは、もうしっかりと膨らんでいる。今はそこへと至るため、地道に、丁寧に、力を蓄えていく“過程”の真っただ中。柏U-18の攻撃を率い始めている15歳のサッカー小僧。加茂結斗という名前、きっと覚えておいて損はない。 (取材・文 土屋雅史)
【関連記事】
- 2つの「リバウンドメンタリティ」が導いた逆襲への序章。柏U-18は大宮U18との激闘を制してホームで連敗回避!
- [関東ROOKIE LEAGUE]静岡学園は3連勝でAリーグ残留。強力ドリブラー、MF松永悠輝はさらなる積み重ねを誓う
- [関東ROOKIE LEAGUE]帝京は5-4で最終節勝利。好守とゴールで貢献のMF山田知希はAチーム復帰と選手権での活躍を目指す
- [関東ROOKIE LEAGUE]西武台は最終節勝利も、得失点差でU-16全国大会へのプレーオフ進出ならず。2発のMF酒井理央はチームを勝たせる選手へ
- [関東ROOKIE LEAGUE] “二刀流”挑戦中のCB神山康介が後半ATに劇的同点弾。3位死守の山梨学院がU-16全国大会出場権をかけたプレーオフへ