「女タイガーマスク」コマンド・ボリショイ ── 施設は自分の原点
プロレスラーの身体づくりとか知ってほしい
──3年前に自分の過去をカミングアウトしたのは? ボリショイ 大阪のプロレスの試合で、淀川区民センターでたまたま試合が行われたんです。それまでは道頓堀でやってたんですけど、会場が使えなくなって。他にないかなって探してたら、淀川区民センターが空いてて。いつも養護施設の子どもたちを招待するのに電車乗って大変だったのに、そこは歩いても行ける距離で、子どもたちにもっと身近に楽しんで欲しいって思って。まずそれがきっかけでした。 この業界に入って25年なんですけど、20年過ぎた頃から、私はこれからどうやっていけばいいのか、養護施設で先が見えないで頑張っている人たちに、養護施設からコマンド・ボリショイって選手が出たんだよって、胸を張って言えるような選手にならないといけない思って。今までは自分がプロレスをやりたくてやってきたけど、これからは子どもたちに胸を張れる存在になりたい。それでカミングアウトしました。養護施設を出てからも、連絡はとってましたから。 ──募金活動をずっとやっておられるとか。 ボリショイ ピュアドリーム募金って言うんですけど、これはダイドードリンコさんとのコラボです。「ピュアドリーム募金自販機」があり、その売上金などを、施設で暮らす子供たちの夢の支援として届けています。今日は、そのために東京(東京在住)から来ました。養護施設ではお金がなかったりとか、そういうこともあるし、子どもたちが安心して夢を見るための資金を少しでも手助けできるように、ずっと募金活動をやってます。そして売上金を寄付してます。 今日はその寄付金と、11月24日、子どもたちを招待する招待券を渡しに行きます。先生(恩師)にスケジュールを聞いて20人くらいを招待する予定です。 ──施設を訪ねるときはどんな心境ですか? ボリショイ やっぱり特別な思いがあります。私の試合は博愛社の子どもたちに一番見て欲しいので。博愛社は私の原点といえる場所。忘れそうな初心の気持ちというか、そういったものを思い出します。東京でもどこでも、試合に勝ちたいですけど、やっぱり大阪ではその気持ちがいちばん強いですね。 ──プロレスラーとしてもっとも苦労することは? ボリショイ 自分が怪我をしていても言えないこと。5年ぐらい持病を抱えているんですけど、 そんなことはあまり言えない。身体が資本だし、プロレスの選手生命にも限りがある。だから今はひと試合ずつ大切にしていきたいです。 ──大きな選手との試合はツライですか? ボリショイ それはないです。昔から小さいので、大きい人と当たっても苦ではないです。当たり前だと思っているので。 ──女子プロレスが元気になるには? ボリショイ プロレスって危険なイメージがあるけど、そうじゃなくて、プロレスラーの身体づ くりとか、魅力とか、そういうことをもっと知って欲しいです。 施設出身で、業界のトップレスラーとして活躍するボリショイ選手は、博愛社の子どもたちにとって誇りに違いない。宣伝もせず、ひたむきに、募金活動も続けている。はたして小さな身体でどんな試合をするのか。JWP大阪大会は24日、淀川区民センターにて。ボリショイ選手は同じ覆面レスラーのLeon選手とスペシャルシングルマッチ30分1本勝負を行う。 (文責/フリーライター・北代靖典)