水原一平が落ちた「ギャンブル依存症」に赦しを 大谷翔平を巻き込んだ違法賭博関与はアウト、でも寛容さは忘れずに
米ドジャーズの大谷翔平選手の通訳として知られていた水原一平氏の違法賭博問題が世間を騒がせています。 6億円を超える巨額の資金を大谷選手の銀行口座から送金した疑惑を持たれていますが、水原氏は「ギャンブル依存症」だったと告白したとされます。 ギャンブル=賭博にハマる人物を描き、笑いにしてきたのが落語です。そこには、誰もが陥る可能性がある「依存症」に社会が向き合うための知恵があります。 (立川 談慶:落語家、著述家、筋トレ愛好家) 【写真】「へっつい」を知っていますか? 先月、寝耳に水のような驚きのニュースが海の向こうから入って来ました。米ドジャーズの大谷翔平選手の通訳だった水原一平氏による「巨額窃盗疑惑」であります。 大谷選手の銀行口座から違法賭博業者に大金が振り込まれたという事件は日本のみならず世界中を驚かせています。違法賭博の沼にハマった水原氏が莫大な借金を抱え、返済のために不正な送金をしたのではと疑われています。 水原氏が大谷選手の口座にアクセスして送金することは可能だったのか…。なぜ違法ブックメーカーは水原氏に450万ドル(約6.8億円)もの大金を貸したのか…。様々な疑問が浮かびますが、詳細は明らかになっておらず、臆測が飛び交っております。 とにもかくにも、大谷選手が全幅の信頼を置き、名通訳として評判を博した水原氏のもう一つの顔が徐々に明らかになっていくのでしょう。裏切られた大谷選手の心境を思うと一人のファンとして複雑な感情が湧いてきます。
■ 「飲む、打つ、買う」で男は身を滅ぼす 「三道楽(さんどら)煩悩」という言葉が落語にはあります。「飲む、打つ、買う」=「酒と博打(ばくち)と女」で男はダメになるということを表現した言葉で、そんな「人間の業」を落語の先人たちは読み切っていました。水原氏が身を滅ぼした賭博は、三道楽煩悩の中でも特にヤバい煩悩として落語では描かれています。 例えば、名作落語「文七元結」には、こんな一節が出てきます。 佐野槌という吉原の大店の女将が、酒と博打で身を滅ぼしている腕のいい左官職人・長兵衛に向かって、「酒と女(への執着)は年とともに弱まるけど、博打だけは骨が舎利(ご飯粒のような遺骨)になるまで続けるものだって、あたしゃ、聞いてるよ。お前さんもそうなのかい」と言うのです。 そして、落語ではさらに、その骨が舎利になるだけではなく、なんと幽霊になっても博打から抜け出せずに成仏できないという噺(はなし)もあります。 それが「へっつい幽霊」です。 「へっつい」とは「かまど」のこと、要するに今風に言えば「コンロ」です。 では、あらすじをご紹介しましょう。