北朝鮮のロシア派兵:国際社会を敵に回す暴走
「火星19」も支援か
また、北朝鮮は10月31日、ICBMの発射を強行し、最新型「火星19」の「発射実験に成功した」と国営メディアを通じて誇示した。米韓当局によると、ミサイルは過去最長の飛翔時間と最高の到達高度を示した。通常の軌道で発射すれば米本土全域を射程内に収める可能性を持つだけでなく、事前の発射探知が困難で、迅速な発射を可能にする固体燃料式エンジンが使われたとみられる。 プーチン、金正恩両氏は昨年9月、ロシアの先端宇宙基地で会談し、北朝鮮による武器・弾薬支援の見返りに、ロシアのミサイル技術などの提供を話し合ったとされている。北朝鮮は昨年、立て続けに偵察衛星打ち上げと銘打ったICBMの発射で失敗を重ねてきただけに、米韓は今回の成功がロシアの技術支援による可能性が高いとみて、調査を進めている。 ロシアも同じ時期(10月29日)に多弾頭ICBMの発射を含む「戦略核戦力の演習を行った」と発表しており、米大統領選を控えて、ロ朝が示し合わせて核・ミサイル能力を誇示した疑いも捨て切れない。
さらなる暴走へ
派兵もミサイル発射も、これを支えるロシアも、国際規範を無視した行動であり、世界の平和と安全を踏みにじる背信行為である。両国の軍事協力がさらに進めば、脅威は欧州や東アジアにとどまらず、世界全体に及ぶ。 今後、とりわけ懸念されるのは、武器・弾薬や派兵の見返りとして、(1)高濃縮ウランなど核物質の増産、(2)ミサイル本体や弾頭の誘導・制御技術、(3)原子力潜水艦の建造──などに関わる先端技術がロシアから北朝鮮に供与されることだ。そうなれば、日本や韓国をはじめとする東アジアの周辺諸国や米国の防衛と安全がこれまで以上に脅かされることになる。
問われる中国
そこで改めて問われるのは、中国の対応だ。ロ朝のパートナーシップ条約について、中国政府は締結当時から「2国間協力にはコメントしない」(6月、中国外務省報道官)と述べてきた。今回の派兵についても、「双方とも独立した主権国家であり、2国間関係をどう発展させるかは彼ら自身の問題だ」と、干渉しない姿勢を続けている。 核・ミサイル開発についても、中国はこれまで北朝鮮に自制を求めてきたとされるが、今回のミサイル発射については沈黙したままで、具体的対応を避けている。中国はかつてロシア以上に北朝鮮の後ろ盾とされてきた。こうした態度は「責任ある大国」として、あまりに無自覚、無責任な態度と言わざるを得ない。日米韓や欧州は、ロ朝に対する新たな制裁や対抗措置を急ぐと同時に、中国に対する説得を強める必要がある。