「心臓を替えようぜ」経営のセオリーにない、イーロン・マスクならでは企業改革の発想とは?
■ 3階層のシンプルな組織 イーロンは、自らの感性を大切にします。 感性に刺激を与えるためには「現場感」が必要です。なので、組織をとにかく簡素化するということを徹底しています。スペースXやテスラも同じ。「各国のトップも必要ない。全部俺がやるんだ」という考えです。 Twitterの組織は、イーロンが入ってきてから3階層になりました。 イーロン、次、現場の3階層です。以前は現場があって、その上にマネージャー、さらに部長、執行役員、国のトップがいました。そしていちばん上にCEOが来るという「5階層」だった。 これだとイーロンは、いちばん下の現場感がわからないし、感じられなくなってしまいます。だから「真ん中の階層、いらないんだよな」ということでバカーンと削ってしまったのです。 ただ、日本は特例を認めてもらいました。日本の文化や商習慣を説明して、「3階層ではなく、4階層にしてほしい」とお願いして、マネージャーを残してもらった。もともと5階層だったものを4階層で勘弁してもらいました。 ■ 優秀な人だけを残したい 組織をシンプルにすることで、イーロンは何がしたかったのか? それは、彼の価値観に合致しつつ、彼の言葉で言うと「最も優秀な人間だけを残したかった」のだと思います。彼なりの人材の見方というのがあって、そこをとにかく徹底したかった。 また、彼は自分が全部を把握したいのです。だから階層をなくしていった。 ただこれは、優秀な人材の獲得と反比例する部分があります。というのも、優秀な人間はマネジメント層に多いからです。その層をバーンと省いてしまえば、現場の人間だけが残ることになる。きっと彼には「使いやすい人間を残す」という狙いもあったのでしょうが、とにかく彼好みの組織を作ることに特化していきました。 そうやって残った人たちに宿題を課しました。それが週報や月報の提出です。中には「小学生じゃないんだから、こんなことやってられない」と辞めていく人もいましたが、逆に言えばひたすらそれを真面目にやれる人だけが残っていったのです。