「AQUOS R9」のデザインが変貌を遂げた理由 ハイエンド推しから“情緒的価値”追求にシフト
デザイン哲学の変化:機能性から情緒的価値へ
AQUOS sense7以降のAQUOSシリーズは、メインカメラをセンターに配置する機能性重視のデザインを特徴としていた。しかし、R9ではこの方針から大きく転換している。この変更について、シャープのデザイン担当者である川充雄氏は次のように説明している。 「これまではハイエンド機種は機械的で無機質なデザイン、ローエンド機種は柔らかく親しみやすいデザインという固定観念みたいなものがどこかにありましたが、そういった区分けはもはや違うような気もするんです。ハイエンドであっても、ちょっと優しさを持つような商品があってもいいなという思いから、AQUOS R9のデザインを再構築しました」(川氏) この大胆なデザイン刷新はシャープ社内でも賛否両論があった。スマホ事業を統括する小林繁氏も「ラフスケッチの段階ではピンと来ていないようだった」(川氏)というが、実機を手に取って納得したという。 その小林氏は「今はめちゃくちゃいいと思っている。愛着が湧いてくるような独特な感じの良さがある」と太鼓判を押す。
「コダマ」「巨神兵」に似ているカメラデザイン
AQUOS R9の「優しさ」を体現するデザインの中で、最も目を引く要素は背面のカメラバンプ(出っ張り)の形状だ。自由曲線を採用した独特な形状は、発表直後からSNS上で大きな話題を呼んだ。多くのユーザーが、このデザインをスタジオジブリ作品のキャラクター、特に「もののけ姫」に登場する「コダマ」や「天空の城ラピュタ」の「ロボット兵」に例えている。 この予期せぬ反応に対し、デザインを手掛けた三宅氏は「意図していなかった」と応じつつ、何かに例えられることは「歓迎」と話している。 「もともとデザインしていたときは、人に近いというところを目指してデザインしていたので、何かに似せようとか、キャラクターに似せようという感覚は全然なかったんです」(三宅氏) 三宅氏の説明によれば、このデザインの本質は「人に近い」形状を追求した結果であり、特定のキャラクターを模倣する意図はなかったという。しかし、結果として生まれたアニメキャラクターとの類似性は、デザインの親しみやすさや記憶に残りやすさを高める効果がありそうだ。