AKB48大ヒットの立役者が明かす“『RIVER』は「数十回直した」” 秋元康とミリオン連発…劇場客を“ドン引き”させた経験も
記録と記憶で読み解く 未来へつなぐ平成・昭和ポップス 井上ヨシマサ(全2回の第1回)
この連載では、昭和から平成初期にかけて、たくさんの名曲を生み出したアーティストにインタビューを敢行。令和の今、Spotifyなどの音楽ストリーミングサービス(サブスク)で注目されている人気曲をランキング化し、各曲にまつわるエピソードを深掘りすることで、より幅広いリスナーにアーティストの魅力を伝えていく。 【画像】前田敦子、板野友美、篠田麻里子らがビキニ姿でジャケを飾った「Everyday、カチューシャ」 ほか
今回は、2024年に作家生活40周年を迎え、7月にそのアニバーサリー企画第1弾となるデュエット・アルバム『再会 ~Hello Again~』をリリースした井上ヨシマサ。‘00年代以降、AKB48の「真夏のSounds good!」 「Everyday、カチューシャ」 「サステナブル」をはじめとする数多くのミリオンセラーを作曲・編曲してきたことで有名だが、それ以前となる‘80年代や’90年代にも、小泉今日子「Smile Again」、光GENJI「Diamondハリケーン」、中山美穂「Rosa」などのヒット曲を手がけている。今回は彼が作詞・作曲・編曲のいずれかを手がけた楽曲限定でサブスクにおける人気曲を考察しつつ、自身も歌唱した最新作についても語ってもらった。 まずは井上にサブスクを利用しているか尋ねてみると、 「寝室でヒーリングのプレイリストを聴くこともありますが、基本的にはアーティスト名が思いつかない時に検索しています。それにしても、このSpotifyランキング表は嬉しい“拷問”ですね(笑)」 と、明るく答えてくれた。さっそく、Spotifyの人気順を見ていくと、なんとTOP10のうち9作がAKB48のシングル曲。AKB48は、CD購入者が参加できる握手会などの特典が功を奏して爆発的にヒットしてきた側面もあるが、井上ヨシマサが手がけた楽曲の数々は、その特典がない現在もなお聴かれているものがとても多いのだ。
『Everyday、カチューシャ』作成中に被災。作品に込めたメッセージとは
再生回数第1位にランクインしたのは、作曲・編曲を手がけた‘11年のシングル「Everyday、カチューシャ」(作詞・秋元康)。本作のCD売上は約161万枚で年間2位(オリコン調べ)、ダウンロードがミリオンヒット(日本レコード協会調べ)で年間5位(レコチョク調べ)、カラオケも年間2位(JOYSOUND調べ)と当時、全方位で大ヒット。しかも、今でもサブスクで人気というパーフェクトなヒット曲と言える。 「『Everyday、カチューシャ』は、もうエピソードが多すぎて全部は話せません(笑)。‘11年5月に発売でしたが、その何か月も前から作っていました。あの頃のAKB48はミリオンを連発し、“この子をセンターにしたい”、“あの子を推したい”といった要望が各方面から秋元(康)さんに殺到しているに違いないと思ったので、“僕はメンバー全員のことを1番だと思っています”という気持ちを乗せようと、初期のデモはハートフルなロックでした。 作業を進めるなかで、特に秋元さんからのダメ出しがあったのはイントロのところ。最初は、“もっと明るくして”、“いやいや、これ以上明るくできません”、ってお互いにゴネて(笑)。それが落ち着いた後も、僕は“カチューシャ”という歌詞に戸惑っていました。でも、“この作品は夏に向けたシングルで、ミュージック・ビデオも海外で撮影するという内容を考慮した上でのキーワードだ”と言われて納得したんです。 そんな風に(秋元さんと)ぶつかりあって、最終的に『バウンス』と呼ばれる作業、つまり、ボーカルや演奏、コーラスなど、これまで録音した数百トラックを再生可能な形式に書き出す作業を進めていきました」