バフェット氏が爆買い、美容品株のチャートに2つの異変
アメリカの証券業界で20年以上にわたって活躍したプロトレーダーが、米国株のチャートの見方を平易に解説する。(最新のドル円相場は こちら ) ■バフェット氏が購入したとのニュース ウォーレン・バフェット氏がCEOを務めるバークシャー・ハサウェイ( BRK.B )が、新規ポジションとして69万株のアルタ・ビューティー( ULTA )を第2四半期に買っていたことが報道され、8月15日の取引で11.17%の大きな上げとなりました。 アルタ・ビューティーは、化粧品、香水、スキンケア・ヘアケア製品、およびビューティサロンサービスを提供し、全米で事業を展開する会社です。早速、アルタ・ビューティの日足チャートを見てみましょう。 しかし、ニュースになったとはいえ、全体的な動きを見てみると、株価は高値となった3月14日から安値となった8月12日の間に44%という極めて大きな下げとなっています。言うまでもなく、多数の投資家たちから完全に見放されていました。 株サイト「Seeking Alpha」には、こんなコメントがさっそく投稿されています。 バフェット氏が買っていたという事実で、アルタ・ビューティーは割安株であることが証明された。割安株投資家に自信を与えてくれるニュースだ。■ブレイクアウェイ・ギャップに注目 チャートを分析しながら売買を行っているテクニカル・トレーダーにとっても、8月15日の値動きは興味深いものです。 8月15日にマドをあけて大きな上昇となりましたが、それ以前の様子を見てみると、株価は安値圏で値固め状態でした。言い換えると、株価の横ばいが続き、明確なサポートラインとレジスタンスラインが形成されました。 注目はマドです。マドは「ギャップ」とも呼ばれ、今回のギャップはブレイクアウェイ・ギャップの可能性があります。まとめると以下のようになります。 ・ ブレイクアウェイ・ギャップは、株価がレジスタンスラインを上放れ、またはサポートラインを下回る場合に発生する。・ 横ばい状態の値固めでは、レジスタンスラインとサポートラインは水平だが、三角形やウェッジなどが形成されている状況では、レジスタンスラインとサポートラインは右上がり、または右下がりとなる。・ ブレイクアウェイ・ギャップは、トレンドの初期段階で発生することが多い。例えば、以前のトレンドが下降基調だった株が安値圏で保ち合い状態となる。その後、ブレイクアウェイ・ギャップが発生して株価は保ち合いから上放れ、下降トレンドが終了して上昇トレンドへ入ったことが確認される。■大陽線は底打ちシグナルになる 次に、アルタ・ビューティーの週足チャートを見てみましょう。 入れた線は10週移動平均線です。これは日足に走る50日移動平均線に相当し、トレンドを把握するために投資家やトレーダーたちに活用されています。この移動平均線だけで判断すると、現在のトレンドは下げ基調です。 しかし、注目したいのは、大きな出来高を伴って今週形成された大陽線です。見てのとおり今週の陽線は、前の陰線2本を包む強い形です。安値圏で現れる大陽線は底打ちシグナルにもなりますから、多くの投資家がアルタ・ビューティーを買い候補リストに入れたことでしょう。 日足チャートにはブレイクアウェイ・ギャップ、そして週足チャートには大陽線が形成され、トレンドの転換が濃厚になったアルタ・ビューティーです。 鎌田 傳(かまだ・つたえ)/カリフォルニア州ロサンゼルス在住の専業投資家。高校卒業後に渡米。大学卒業後、1988年にカリフォルニアのベンチャーキャピタルに入社。ユニオンバンクの証券部や投資情報会社「TradingMarkets.com」のマーケットアナリストなどを経て現在に至る。著書に『 米国株チャート最強の教科書 』(SBクリエイティブ)。「T.Kamada」として情報発信するX(旧Twitter)( @Kamada3 )や ブログ のファンも多い。好きな映画は『フィールド・オブ・ドリームス』。 ※当記事は、証券投資一般に関する情報の提供を目的としたものであり、投資勧誘を目的としたものではありません。
鎌田 傳