中島健人「悔しさと挫折と悲しさをたくさん経験してきた」「同世代で戦う仲間ができた」キタニタツヤとのユニットGEMN結成の裏側
僕たちはパーソナリティがちょっと似ている
──楽曲制作はどのように進めていったんですか? キタニ 第2期で放送される「2.5次元舞台編」で描かれるのは“アクア”の内面なので、歌詞では我々ふたりとアクアの共通点にスポットを当てました。僕たちは彼にすごく共鳴できるから。 中島 キタニくんと僕は、パーソナリティがちょっと似ている部分があって。そこでつながり合った感じはあります。 キタニ 『【推しの子】』に登場するキャラクターたちは、ステージ上で「自分を見ろ!」っていう戦いをやっていますが、それは自分も同じで。自分を見て欲しいから音楽を作っているし、それが創作のモチベーションでもあるんです。健人さんは健人さんで、自分という存在をこの世のどこかに残したいみたいな欲求があると思うんです。 中島 そういう意味では、僕らが携われたのが2期の2.5次元舞台編でよかったかもね。1期は、芸能界を描いた漫画の示しを強烈に世間に流布してくれたと思っていて。 キタニ アニメの内容もYOASOBIの「アイドル」も、ひたすらポップに、間口を広げて衝撃を与えることに注力していましたよね。だからこそ、2期では物語の内容も主題歌も、人間が抱える闇を掘り下げることができたと思うんです。 自分はテレビの中のケンティしか知らなかったから、健人さんと喋っているときに経験してきた挫折とか、腹に一物を抱えていることが見えてきて。そういうケンティを知れたからこそ、ふたりで作った楽曲はちょっと暗い曲になっちゃったけど、ドロドロした感情はきっと誰でも持っていることだし、共鳴してくれる人も多いと思います。 中島 人間が抱える闇を浮き彫りにした、ちょっと魔力が備わっている曲になったと思います。
環境の変化は人を変える
──強烈なスポットライトを浴びるお仕事をしているおふたりだからこそ、物語に深く共鳴できるんでしょうね。 中島 だって僕、ジュニアにいたときのグループ名が「中山優馬w/B.I.Shadow」ですからね。中山優馬くんという強烈な光に憧れる影でしたから(笑)。 キタニ へー! めっちゃいい。 中島 今ならかっこいい名前だなと思うけど、当時はやっぱ嫌でしたよ。「なんで影なんだ!」って。悔しさと挫折と悲しさを、中学時代からたくさん経験してきたんです。ただ、そこで得たエネルギーは確実にある。やっぱ挫折は人を強くするから。去年初めてキタニくんと一緒にご飯を食べたときに、そういうことも全部話したつもりです。 キタニ 栄光の道にいるような人でもそんな過去があったんだと知って、すごい安心しました。自分らの仕事をしていたら、本質はきっと変わらないんだろうなって。ずっと上にいる目の上のたんこぶのような存在を見て、「そいつを倒す」と思ったり、勝てない自分の情けなさにひたすら向き合ったり。自分と他の人の才能を比べたり。 それでも、自分が持っている武器でなんとかやろうという感覚を持っている。健人さんはもちろん、『【推しの子】』の “アクア”を見て、「誰しも同じなんだ」という確証を得ました。 ──同世代で戦う仲間ができた感覚もあるのでしょうか? 中島 そうですね。僕の今までのアイドル人生の中では、同世代とスタジオにこもってしっかりと楽曲を制作していく経験をしたことがなかったんです。だから今回は楽しいのひと言に尽きるというか。 キタニ 僕が最初にトラックの骨組みを作っていたんですけど、曲の冒頭からサビに入るまでのメロディを健人さんに聴いてもらったら「ちょっとやりたいことがある」と言ってくれて。レコーディングブースに入ってラップみたいなものを録ってくれたんです。いろんなパターンを完全にアドリブで。 「なるほど、この人にはこういうビジョンが見えてるんだ」と思って、健人さんの素材をもとにAメロができました。健人さんのすごく低いパートから入る感じは結構びっくりすると思うし、ゾワっとするあの冒頭が作れたのはよかったですね。 中島 環境の変化は人を変えるなって改めて思いましたね。今回はすごく肩の力が抜けた自然体の状態で、自分のパッションやエネルギーをぶつけられたと思います。 去年はグループとしても自分としてもめちゃくちゃいろんなことがあったので、コラボのお話をいただいたことが一筋の光のように感じていて。それこそ今年の頭の楽曲のクリエイティブ期間も、いろいろなことがあったから。