瀬戸康史が、高橋一生との出会いをきっかけに考えた“理想の俳優像”「個性は逆にないほうがいい」
まずは自分の心が「やりたい」と思う仕事をすること
――白井晃さんをはじめ、前川知大さん、ケラリーノ・サンドロヴィッチさん、三谷幸喜さん、栗山民也さん、そしてジョナサン・マンビィさんなど、錚々たる演出家とお仕事を経験されてきました。「いい出会いに巡り会えている」とのことですが、出会いを生み、育んでいくためにどんなことを意識されていますか? 若い頃は「誰とお仕事をしたい」という意志もなかったし、事務所が持ってきてくれたお仕事をやるという、完全に受け身だったんです。23~24歳くらいからちょっとずつ「人生は一度きりだから、好きなことをして生きていきたい」と意識が変わっていって。そこからすごく楽しくなったし、今は本当に好きな仕事をやれているように思います。 媚を売って気に入られようとも思っていないです。わりと僕は、第一印象で変な感じに受け取られることがないので、それはありがたいですけど(笑)。 自分が選んだお仕事だったらどんな辛いことも頑張れるし、責任感も生まれる。まずは自分の心が「やりたい」と思う仕事をすること、そして全力で楽しむことが、結果的にいい出会いにつながる気がします。 ――「やりたい」お仕事とは? 自分が演じる姿が全く想像できない台本はすごく興味を抱きますね。今回の『A Number―数』は難解な戯曲なので、武者震いをしながら「挑戦してみよう!」と思いました。
高橋一生さんとの出会いをきっかけに……
――俳優としてのご自身の個性は、どんなところにあると思いますか? 役を演じる上では、個性は逆にないほうがいいのかなと思っていて。僕が目指しているのは「馴染む」こと。その作品の色や世界にどう馴染めるかが、ずっと僕のテーマです。もちろん作品によるとは思いますが、『マーキュリー・ファー』で共演した高橋一生さんとの出会いをきっかけに、そう考えるようになりました。 ――瀬戸さんは常々、ご自身のことを「ポジティブ」だとおっしゃっています。それはもともとの性質だと思いますか? それとも環境によって育まれてきたもの? ずっとポジティブかと言われたら、そうではなくて。上京したての頃は子どもだったし、すごく大人が怖かったんです。福岡から出てきて、標準語も喋れないし。いろんなことをマイナスに考える思考になっていた自分がすごく嫌でした。なんか負けてるような気がしたので、無理やり笑ったり、面白いものを見たりしたこともあります。 ただ、自然に囲まれた福岡の田舎で育ったので、それによって心が豊かになったとは思います。福岡って博多祇園山笠があったり、お祭りが盛んです。河童の伝説があるうちの地元にも祭りがあって、子どもの頃からお祝い事に積極的に参加していたので、ハッピーなメンタルが育まれたのかもしれません(笑)。