瀬戸康史が、高橋一生との出会いをきっかけに考えた“理想の俳優像”「個性は逆にないほうがいい」
ドラマ『くるり~誰が私と恋をした? ~』や映画『違国日記』など、映像作品での活躍が話題の瀬戸康史さん。『彼女を笑う人がいても』や『笑の大学』など舞台にも精力的に出演しており、その確かな表現力は演出家や演劇ファンからの信頼も厚い。 【最新画像を見る】瀬戸康史が、高橋一生との出会いを きっかけに考えた“理想の俳優像” クローンを作ることが可能になった近未来を舞台にした舞台『A Number―数』は、秘密を抱える父親と、自分がクローンであることを知った息子の物語。クローンを含む3人の息子役に挑む瀬戸さんは現在、「生みの苦しみ」の真っ只中だという。 それでも魅了される舞台への思い、そして困難に直面しても常にポジティブでいられる、ハッピーなマインドを育んだ原点に迫ります。
「どう生まれたか」よりも「どう生きていくか」
――『A Number―数』は父親役を演じる堤真一さんとの二人芝居ですが、戯曲を読んでどんなメッセージを受け取りましたか? 堤さんもおっしゃっていましたが、「お父さんはなぜ息子のクローンを作ってしまったのだろう?」と思いました。ロボットが製造されるのとは大きく違い、クローンが作られるのは、別の心が生まれていくイメージがあるんです。 父が息子のクローンに会いたいという気持ちはわからなくはない。でもやっぱり、人間がやっちゃいけないことだという印象を受けました。 僕が演じるクローンを含む息子の3役は同じ遺伝子ですが、物語の最後に登場するマイケルは、ほかの二人と違ってとてもポジティブな生き方をしているんです。それは、彼の育った環境がよかったから。最終的には「どう生まれたか」よりも「どう生きていくか」が大事なんですよね。自分次第でいい方向に転換できるという考えはすごく共感できましたし、希望を持てる物語だと思いました。
舞台に対する思いが変わった瞬間
――瀬戸さんは7年前、今回演出を手がけるジョナサン・マンビィさんのワークショップを受けたことがあるとか? 30人くらいの役者が参加してある戯曲をやったんですけど、本当に楽しくて。誰かの意見を否定するわけでもなく、それぞれの役者と「この戯曲ってどうだろう?」と対話を重ねるジョナサンさんの姿がとても印象的で。いつかご一緒したいと思っていたので、「『A Number―数』をやりませんか?」と言われて「ぜひお願いします!」という感じでした。 ――ドラマや映画での活躍はもちろん、舞台にも精力的に出演されています。瀬戸さんがそれほど舞台に魅了される理由は? うちの事務所には「俳優集団D-BOYS」という若手俳優グループがあって、僕も17歳から加入して舞台に出演していました。まだ全然芝居をやったことがない段階から、いろんな演出家さんと組ませてもらって。今となってはとてもありがたい経験でしたが、当時の僕はすごく怖かったんです。「失敗したらどうしよう」とか、「稽古でどう動こう」とか、作品と関係ないことばかり考えていました。 そんな中、2015年に『マーキュリー・ファー』で初めて白井晃さんの演出を受けたときに、自分の内面を全部見抜かれて、プライドも何もかも一度全部壊されたんです。それからですかね。舞台に対する思いが変わったのは。 余計なことを考えなくなったし、何をしても恥ずかしくないと思えるようになったんです。それは本当にありがたかったし、いい出会いに巡り会えているなと思います。