『極悪女王』でゆりやんが魅せた「まるで本人」な演技力。俳優より「芸人の方が憑依が得意」なのはなぜか
「コント力」を演技に活かすゆりやん
「芸人の場合は、こう演じようというよりも、『キャラになりきろう』という考え方からのアプローチがうまい人が増えてきている気がします。三谷幸喜さんが先日言っていましたが、バイきんぐがコンビで出ているCMを見たときに、ある意味〝色〟の強い小峠さんは小峠さんに見えるんだけど、西村(瑞樹)さんは本当にそういう人に見えたと絶賛していました。 そういうふうに、ナチュラルに憑依できるタイプっているんです。アイドルも、センターやエースはどうしても〝色〟が強いタイプが多いので、その脇にいるメンバーのほうが、色を感じさせずナチュラルにそのキャラになりきれるパターンが多くなるのではないでしょうか」(同) 流れとして、その「なりきる」技術は、近年上がってきていると、放送作家はみている。 「以前よりもコントの重要性が高くなってきている近年は、設定やキャラになりきるほど面白くなると思うので、その傾向はより強くなってきている気がします。 とはいえゆりやんは、『極悪女王』でも、誰が見てもゆりやんだという〝色〟も強いのですが、もともと憑依するのがうまいというか、コントもあれだけめちゃくちゃなことを一人でやって、ちゃんとその世界のキャラとして見せる説得力のようなものがありますから、ナチュラルに憑依するというよりも、憑依が〝色〟を超えるタイプの芸人なのかもしれません」
アイドルの器用さも「なりきり力」に繋がっている
アイドルも、さまざまな顔を見せる職業であることが大きなポイントだ。 「『アイドルとは何にでもなれる存在』と、よく言われます。演じることをひたすら突き詰めていく役者とはまた違って、アイドルや芸人って、演技もすればトークもやり、アイドルもコントをしたり、芸人が歌ったり、いろんなことを経験しなければならないことが多いので、そこで器用さが身についていく人が登場してくることにつながっているのかなという気がします」 いっぽうで、レイザーラモンRGやハリウッドザコシショウのような、本人の特徴を極端に誇張するものまねも人気があるが、こういった空気をドラマに投入しようということはないのだろうか? 「ドラマとなると、また別ですよね(笑)、ストーリーよりも、その極端なものまねを楽しむ作品になってしまうと思います。まねようという気持ちが強かったり、ものまねのスキルが高いと、そこは単に再現になってしまって、演技としての面白さが薄くなります」 動画など、なりきるための研究素材が近年は潤沢にあることも、学習しやすい環境を後押ししているという。まるで本人のような表情や仕草に驚かされる機会は、ますます増えそうだ。 <取材・文/太田サトル> 【太田サトル】 ライター・編集・インタビュアー・アイドルウォッチャー(男女とも)。ウェブや雑誌などでエンタメ系記事やインタビューなどを主に執筆。
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