「ヒトゲノムの8割は太古のウイルス」「遺伝子は想定の五分の一」…山中伸弥が解説するヒトゲノム計画で明らかになった「意外な事実」
「ガラクタではなかった」
羽生その文字というか塩基の配列の意味が解けないわけですね。 山中はい。ごちゃごちゃして余分だったり無駄だったりして見えるので「ジャンクDNA」「ガラクタ遺伝子」と呼ばれていますね。ジャンクDNAは面白いんですよ。ヒトゲノムの“下書き版”が完成した2000年、アメリカのクリントン大統領とイギリスのブレア首相が共同で記者会見を開いて完成を世界に高らかに宣言しました。 羽生大々的にニュースになっていましたね。 山中当時、ゲノムの7、8割は、意味のない繰り返し配列だったり、太古の昔に入り込んだウイルスの配列だったりで、もうまったく無駄な「ジャンク配列」だと思われていました。でもその後、十年も経たない間に、そのジャンクにいっぱい意味があることがわかってきたんです。 羽生ガラクタではなかったんですね。 山中ということになってきています。
ヒトゲノムはまだまだ未知の世界
山中だいたい、ゲノムが解読されるまで、僕を含めて研究者たちはみんな、自分たちには遺伝子が10万個くらいあるだろうと信じていたんですね。それが解読を終わってみると、2万個くらいに減ってしまって(笑)。 羽生いきなり5分の1に。 山中はい。でも今また、だんだん増えていって、約3万個と言われています。 羽生若干の増減があるんですね。 山中それもまだ確定していません。だから配列を全部読むことはできたんですけれども、意味はまだまだつかみきれていないのが実情です。 『遺伝子を「シュレッダーで破壊」!?…ノーベル賞科学者・山中伸弥が語る、ゲノム解読の意外過ぎる「ウラ側」』に続く
山中 伸弥、羽生 善治