加藤シゲアキ×小川哲×今村翔吾が語る…「今小説家にできること」能登半島地震復興応援企画始動!
復興応援企画「あえのがたり」
加藤 やっぱエンタメの力って本当にすごいですよね。物語とか、その心みたいなもの。人の心を動かす力があるはずなんです。僕自身もいろんな転機があり、何かちょっと今までと違うことができないかなって思ってもいたところでした。 今村 後はどんな人たちに執筆をお願いするかと、どういう形態で発表するか、ですね。 加藤 被災している方たちにはまだ本を届けられないので、できればWEB掲載のほうがいいのかなあ、などは考えますね。 小川 本として刊行するときは全国で買えるようにして、作家の印税と出版社の利益の部分を全額寄付するということでいいでしょうか? 今村 それでいいと思います。 小川 あとはお声がけはいろいろなジャンルの作家さんにしたいですね。 加藤 確かに。SFから純文学、ファンタジーも含めてなんでもありにしたいですね。被災地のことを書いてもいいし、全く関係ないエンタメにしてもいいと思っていますがいかがでしょうか? 今村 そうしましょう。僕はもちろん時代歴史小説を書きますよ。もうね、ある程度考えはできていて……。 小川 早いですね(笑)。あとは、ぜひこの機会に「全今村」に集合してほしいです。今村翔吾さん、今村昌弘さん、今村夏子さん……。 加藤 売れっ子ばっかりじゃないですか。今村強いですね(笑)。 今村 小川さんも強いじゃないですか。全小川。小川哲さんに、小川洋子さん、小川糸さんに、小川一水さん……。 加藤 おお、小川さんも強い! 誰にお声がけするかは読者へのサプライズとしてとっておきましょう。 小川 せっかくこの三人がやるんだからそれっぽいメンバーになるといいですね。 今村 そうですね。僕ら三人ならではのメンバーにお声がけしましょう。 加藤 そういえば、肝心のテーマはどうしましょう? 小川 編集者から来ている仮テーマは「あえのがたり」。これはどういう意味ですか? ──奥能登地域の農家では、稲作を守る“田の神様”を祀り、感謝をささげる儀礼を「あえのこと」というそうです。「あえ=おもてなし」、「こと=祭り」を表し、被災地の方を物語でおもてなししようという意図で「あえのがたり」と考えてみました。 加藤 なるほどね。ちょっとだけわかりにくいかなとも思うけれど、お二人はいかがでしょうか? 小川 「復活」とか「復興」、「絆」、「希望」、「未来」とかをテーマにしてしまうとわかりやすいけど押しつけがましいと思っていたのでちょうどいい気もしています。 今村 悪くないと思います。最初、「祭り」とかもありかなと思っていたのですが、何人もの作家さんが書くときにバリエーションがなくなりそうなので、間口は広くとっておいたほうがいい気がします。 加藤 年内におもてなしできるように頑張ってお声がけをして、すぐに執筆しましょう! 言い出しっぺなので最初に書きますよ。 (この鼎談は二月下旬、講談社にて行われました) ---------- [撮影:五十嵐絢也] [協力:有限会社白崎シーサイドホテル多田屋] ---------- ---------- 加藤シゲアキ(かとう・しげあき) 1987年生まれ、大阪府出身。青山学院大学法学部卒業。2012年『ピンクとグレー』で作家デビュー。2021年『オルタネート』で第42回吉川英治文学新人賞、第8回高校生直木賞を受賞。最新作『なれのはて』が第170回直木賞の候補に。他の著書に『閃光スクランブル』『Burn.━バーン━』『傘をもたない蟻たちは』『チュベローズで待ってる〈AGE22・AGE32〉』(全2冊)『1と0と加藤シゲアキ』、エッセイ集に『できることならスティードで』がある。 ---------- ---------- 小川 哲(おがわ・さとし) 1986年生まれ、千葉県出身。東京大学卒業。2015年、「ユートロニカのこちら側」が第3回ハヤカワSFコンテストで大賞を受賞し、作家デビュー。2018年『ゲームの王国』で第38回日本SF大賞、第31回山本周五郎賞を受賞。2022年刊行の『地図と拳』で第13回山田風太郎賞、第168回直木賞を受賞。同年刊行の『君のクイズ』は第76回日本推理作家協会賞〈長編および連作短編集部門〉を受賞。最新作『君が手にするはずだった黄金について』が2024年の本屋大賞にノミネートされた。 ---------- ---------- 今村翔吾(いまむら・しょうご) 1984年生まれ、京都府出身。2017年、『火喰鳥 羽州ぼろ鳶組』でデビューし、同作で第7回歴史時代作家クラブ賞・文庫書き下ろし新人賞を受賞。2018年、「童神」(刊行時『童の神』に改題)で第10回角川春樹小説賞を受賞。2020年、『八本目の槍』で第41回吉川英治文学新人賞を、『じんかん』で第11回山田風太郎賞を受賞。2021年「羽州ぼろ鳶組」シリーズで第6回吉川英治文庫賞を受賞。2022年、『塞翁の楯』で第166回直木賞を受賞。 ----------
小説現代編集部