3月3日はひな祭り 「桃の花」「菱餅」「ひなあられ」の意味とは?
ひな祭りの行事食にも意味がある
ひな祭りといえば桃の花。古来、中国では桃は邪気を祓い長寿を得ることができる神聖な植物と考えられており、この思想は日本にも伝わりました。 日本最古の歴史書『古事記』にも、伊邪那岐命(いざなぎのみこと)が桃の精霊の助けを得て無事、黄泉の国から逃げることができた様子が描かれています。奈良の纒向(まきむく)遺跡から大量の桃の種が出土していることや、『桃太郎』伝説も、この桃の神聖視によるものと考えられています。 また、日本では、桃の韻が百歳を表す「百歳(ももとせ)」に通じることから、桃は長寿の縁起物でもあり、上巳の節句にも桃の花を浸した「桃酒」あるいは「桃花酒」をが供されました。江戸時代頃から上巳の節句には桃酒の代わりに白酒が好まれるようになり、やがてひな祭りのお酒として定着しました。今では子供も飲めるよう、白酒のような見た目の甘酒が主流になってきましたね。 白酒のほか、ひな祭りの定番の飲食物といえば、「菱餅」「ひなあられ」「ひちぎり」「蛤」などが挙げられます。 菱餅のルーツは、古代中国での上巳節で食べられていた春の七草のひとつ母子草(御形・ごぎょう)を搗き込んだ餅。これが日本にも伝わりましたが、日本では母子草のり代わりに、様々な効能があり邪気を祓う薬草として古くから食されていた蓬を入れた蓬餅(草餅)を食べるようになりました。 江戸時代になると、菱の粉を入れた白餅を重ねるようになりました。菱形になったのもこの頃からで、菱の実の形を模したとか、心臓の形を模したとかいわれています。 クチナシで染めた桃色の餅も重ねた三色菱餅になったのは、明治時代に入ってから。現在では緑は植物のように健やかな成長(蓬による邪気祓い)、白は純潔と子孫繁栄、長寿(菱の実の血圧を下げる効果)、桃色は魔除け(クチナシの解毒作用)を表すとされています。 ひな人形を携えて野山に弁当を持って出かけ、おひな様に春の景色を見せる「国見せ」の際、外でも菱餅を食べられるよう工夫したのがひなあられといわれています。関西のひなあられがこの説を裏付けるもので、餅を炒って醤油や塩などで味付けしたあられです。これに対し、関東のあられは米を爆ぜさせ砂糖をからめたもので、江戸でよく食べられていた爆米という菓子から転じたとか、米粒を干して炙って作ったとかいわれています。 京都でこの季節に出回るひちぎりも、雛祭りならではのお菓子です。宮中で上巳の節句の際に作った餅が後に変化したものと考えられています。宮中で人手が足りず餅を綺麗に丸める手間を惜しんで、引きちぎったのが名前の由来だそうです。