「水俣病は終わっていない」『マイクオフ問題』で発言を遮られた男性の思い 公式確認から68年も解決の道筋立たず「被害者の声に耳を傾けない国や熊本県の姿勢に問題」
有識者は国や熊本県の姿勢を問題視
この『マイクオフ問題』について反発した団体側に対し、環境省は現場で「不手際だった」と説明。会場で「大臣、マイクを切ったことについてはどう思いますか」と質された伊藤環境相(当時)は「私はマイクを切ったことを認識しておりません」と述べ、意図的にマイクを切ったことを否定し、足早に会場を後にした。 しかし、後日環境省が公表した進行台本には「3分でマイクオフ」との記載があった。事前に団体側に伝えることになっていたが、伝えられていなかった。 伊藤環境相(当時)は「マイクの音量を切るという行為については大変遺憾であり、発言された人に大変申し訳ない思いです。深くおわび申し上げます」と述べた。 環境省の一連の対応に批判が高まり、環境大臣が再び水俣を訪れ、団体側に謝罪する事態に追い込まれた。 水俣病問題に詳しい熊本学園大学の花田昌宣シニア客員教授は「出発点はやっぱり国・県が謝罪する場である。水俣病の患者・被害者を軽視しているとしか言いようがないのが、今年の5月1日だった」と述べた。 花田シニア客員教授は「日頃から被害者の話に耳を傾けない国や熊本県の姿勢に問題の本質がある」と指摘する。 熊本学園大学は水俣病の教訓を伝えるため被害者や研究者から学ぶ『水俣学講義』を開講。11月28日の講義では『マイクオフ問題』を取り上げた。 熊本学園大学・水俣学研究センターの田㞍雅美研究員は「被害者を軽視する、馬鹿にしたようなところが如実に現れた事件だと思う」と述べ、「水俣病は本来一つであるのに、国が『認定・未認定』と患者を線引きした。これが『水俣病が終わらない』大きな原因だ」とした。 受講した学生は「水俣病の症状が出ているにもかかわらず認められないというのは苦しいことだと思う。(マイクオフ問題は)本当に許せない」と話した。
再懇談後に実務者協議続くも前進せず
『マイクオフ問題』を受け、環境省は大臣との再懇談をへて、現在、被害者団体と実務者協議を続けている。認定制度の見直しや健康調査の実施をめぐり意見を交わしているが、議論は平行線をたどっている。 水俣病被害者・支援者連絡会の山下善寛代表代行は「ほとんど前進がないという状況。本当に水俣病の解決をしようと思っているのか。非常に不満の残る態度、回答だった」と述べた。 また、松﨑さんが所属する水俣病患者連合も未認定患者に支給される療養手当の昨今の物価上昇を踏まえた増額などを求めているが、こちらも前に進んではいない。 松﨑さんは「この人は水俣病か、未認定患者かと分けたのは政府なので…。不公平なやり方をいい加減に解決してくれなければ、私は(水俣病が)終わったとは信じていない」と話した。 再来年の5月には公式確認から70年を迎える水俣病。解決の道筋すら立っていないこの問題にどう向き合うのか、環境省の姿勢が問われている。 (テレビ熊本)
テレビ熊本
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