コカコーラを日本一売った男の「営業力」の源泉 「雨風にさらされ、つらい外回り」に先輩の教え
よく見るとウチの商品ではなく、他の業者が入れたものが水浸しで、それでこちらの在庫スペースが同じ状態になっているように見えます。土居さんだけでなく、奥さんもそのときに気がついたようです。 ■ちゃんと謝れ! すぐに片づけろ 「これはウチじゃなくて、あとから納品した他の業者の品が濡れて……」と私が説明しようとすると、突然、土居さんが私を怒鳴りつけます。 「こらぁ、何だぁこれは。こんなことをしたらお店にどれだけ迷惑が掛かると思うんだ」
ものすごい迫力です。思わず肩をすくめますが、私以上に奥さんが土居さんの剣幕に驚いた様子です。そうこうしているうちに主人もやってきました。間髪入れず土居さんが怒鳴り続けます。 「だいたい、お前がきちんと整理しておけば、こんなことにならなかったんだ。我々の仕事はこんなんじゃダメだ。ちゃんと謝れ! すぐに片づけろ」 それからも土居さんは厳しく私を叱りつけます。私は「申し訳ありません。以後こういうことのないように気をつけます」と平謝りです。主人と奥さんに深々と頭を下げて、2人で片づけに取り掛かります。
腕組みをしている主人の傍らで、奥さんは事情を察してきまり悪そうにこちらを見ています。在庫スペースを片づけて店を後にします。営業所に帰るクルマの中で、土居さんが話しかけてきます。 「どうだ、気分は。これでしっかりと我々の姿勢が相手に伝わったから、まぁよしとしよう」 「よしなんですか。正直きつかったです。事前に『覚悟して叱られろ』と言われていたからなんとか耐えられましたが、そうでなかったら『なんでこんなことを言われるんだ』と、さらに落ち込んでいますよ。第一、こちらに落ち度がある訳ではないですから」
この状況に釈然とせず文句も言いたくなります。土居さんは「悪い、悪い。でも、これで一番いいかたちで収まったから勘弁しろ」と涼しい顔をしています。 そう言われても何がなんだかわかりません。まぁ、すし安の怒りも収まったからいいかと、ひとまずホッとしてクルマを走らせます。 翌週、すし安の訪問日です。 前回の件があるのでなんとなく敷居が高いのですが、伺わないわけにはいきません。店のドアを開けると奥さんがいます。「また、何か言われるかなぁ」と、内心落ち着きません。