コカコーラを日本一売った男の「営業力」の源泉 「雨風にさらされ、つらい外回り」に先輩の教え
「主人がすごく怒っているのよ。私も同じだけど、あんたどういうつもり?」 一気に背筋が凍り付きます。 「何をやっているのよ。雨に濡れた箱もあるし、床がびしょびしょじゃない。ちょっと店まで見に来なさい」 怒られるようなことをしていないし、納品した商品も濡らさないように運んだので、クレームになるようなことはないはず。状況を飲み込めません。でも、まずはお店に伺わざるを得ない状況です。受話器を置くと思わずため息が漏れ、天井を仰ぎます。
「どうした、深刻な顔をして」 電話のやり取りの様子を横で見ていた先輩社員の土居さんです。 「じつは、すし安さんから……」 話の内容を伝えます。 「そうか、そりゃ大変だな。でも、お前はちゃんとやってきたんだな。それは間違いないか」 「はい、怒られるようなことは何もないと思います」 「よし、じゃあ、一緒に店まで行ってやるから乗せてってくれ」 「え、いいんですか。でも、土居さんには関係のない話なので……」
「いいから一緒に行こう。ほら、遅くなるとそれだけで怒られネタが1つ増えるぞ」 早々にクルマを出して、2人ですし安に向かいます。やれやれという気持ちと、もう暗くなりかけているこの時間にお店に行ってくれる土居さんへの申し訳なさが入り交じり、なんとも言えない感情がこみ上げてきます。 お店までもうすぐです。そのときに土居さんから一言。 「いいか。お前の言う通りなら、こちらに非があるとは思っていない。でも、俺は先輩としてお店でお前を思い切り叱る。思い切りだぞ。お前も覚悟して叱られろ」
何を言っているのかさっぱりわかりません。非がないのなら、怒鳴られる筋合いもないのではないか。土居さんからそんな話を聞かされながら、すし安に到着です。 2人で店に入ると主人が開口一番、「お前のところはなんだぁ。倉庫を見てこい」との怒鳴り声が飛んできます。奥さんと3人で倉庫に行ってみると、私が納品したあたりに水がしみ出し、商品も濡れています。「これはないよね」と、奥さんが隣でつぶやくようにこちらを見ます。