公安委の事務局を県警がやっていて警察を管理できるのか?…研究者は批判する、機能しない制度設計で「県警は野放し状態」
鹿児島県警の不祥事を巡り、県警を管理する「県公安委員会」の在り方が問われている。県民の代表と位置付けられ、警察業務に県民の考えを反映させるという任務を負うが、活動内容が知られる機会はほとんどなく、機能しているか疑問視する声もある。連載「検証 鹿児島県警」の第2部は、県公安委の実態を捉え、県警の信頼回復へ果たすべき役割を考える。(連載・検証鹿児島県警第2部「問われる公安委」⑤より) 鹿児島県公安委「個人が特定されない形で一部開示可能」 捜査対象事案の事件記録を「不開示」とした県警の決定を取り消す
鹿児島県公安委員会は今月20日、ホームページ(HP)の発信内容を改めた。 会議録に開催時間や出席者名などを記し、これまで伏せていた会議のやりとりは、出席者の発言を一部載せるようになった。9月25日の定例会では、委員が「(職員が本部長に課題を直言する)改革推進研究会ではボトムアップ型で意見を求めることに意義がある。出席者が具体的な意見を出しやすいように配慮願う」と野川明輝前本部長らに求めたことが分かる。 しかし九州各県の公安委HPと比べると、公開の迅速さに課題が残る。25日時点では、会議録は9月分までしか掲載されておらず、27日に12月分まで載った。苦情申し出の案内先は、昨春の県警の組織改編で総務課に統合した「相談広報課」となったままだ。 ■ □ ■ 公安委制度を研究する専門家たちからは「県民の代表組織としての責任」について厳しい指摘が相次いだ。 京都産業大学の浦中千佳央教授(警察学)は「公安委が機能していたとしても、説明が足りなければ県民が正当性を判断できない」と話す。警察への不信感を払拭するためにも「どのような指導や監察をしているか、可視化を進める必要がある」と述べた。
透明性を求める声は他にもある。専修大学の白藤博行名誉教授(行政法)は「(定例会は)議題により傍聴できるものはある。全て非公開は理由を欠く」という。そもそも公安委が機能しない制度設計だとして「県警は野放し状態と言える」と批判。県公安委の事務局を県警が担っている実情から「警察を管理するという目的通りの仕組みにするならば、独自の事務局を設ける必要がある」と提言した。 ■ □ ■ 25日午後6時すぎ。鹿児島市のJR鹿児島中央駅前に、県公安委の石窪奈穂美委員長ら委員3人の姿があった。県警幹部ら約10人と年末の繁華街を視察し、警戒に当たる警察官を激励する恒例行事だ。 南日本新聞は四つの質問を事前に提出していた。県公安委側は一つは応じるが、他の三つは「別の取材時に回答済み」との理由で受け付けられないと答えていた。 視察後、石窪委員長は直接取材に初めて応じた。すでに回答済みとされた、県警に対する県公安委の役割について質問をすると、「定例会などで説明を受けている県警の活動実態は、実際に視察して分かる部分もある。今後の公安委の活動に生かしたい」と述べた。
「今後の情報公開の在り方は」-。質問をさらに投げかけようとすると、県警担当者に打ち切られた。県公安委員と県警幹部らは次の予定があることを理由に立ち去った。 =第2部おわり=
南日本新聞 | 鹿児島