福岡市・天神に地下美術館新設、博物館を大改修…「天神ビッグバン」10年で市が文化・芸術事業を本格化
福岡市は、次代の街づくり施策の中核に「文化・芸術の発信強化」を据える。中心市街地の再開発事業「天神ビッグバン」から10年となるのを機に、新年度から市立の美術館と博物館の整備事業を本格化させる。天神地区に「地下美術館」を新設し、国宝の「金印」を所蔵する市博物館の大規模改修にも着手するもので、訪日客の増加もにらみながら都市の魅力向上につなげる狙いがある。(原聖悟) 【イラスト】改修後の福岡市博物館のイメージ
モデルはルーブル美術館
新美術館は、市の近現代美術館「福岡アジア美術館」(博多区)の「分館」に位置づける。2026年に廃止されることになっている警固公園(中央区)の地下駐車場(延べ床面積約1万1000平方メートル)を転用する計画で、市幹部は「10年以内のオープンを目指したい」としている。
1999年に開館したアジア美術館は、23か国・地域の絵画や工芸品など約5000点を収蔵。中には購入時の200万円から16億円(推定)に価値が高騰した希少な中国の現代美術作品もある。一方、ビルに入居する同美術館は、展示スペースの不足から公開できる作品数が限られていた。新美術館に5メートルほどの天井高を確保した上で、主要な展示機能などを移し、市民らが芸術に触れられる機会を増やす。
市幹部によると、巨大なガラス製ピラミッドから地下のエントランスに向かう仏・ルーブル美術館を参考に、地上部に新美術館の理念などを表すゲートやモニュメントをつくる構想もある。高島宗一郎市長は「広場に象徴的な入り口があり、地下に下りて美術館につながる。アジアのリーダー都市にふさわしいデスティネーション(目的地)ができる」と事業の意義を強調する。
市は新年度当初予算案に関連費用を計上し、具体的な計画を詰めていく方針だ。
百道浜地区の臨海部一体
臨海部の百道浜地区で90年に開館した市博物館(早良区)では、施設の改築と合わせて敷地南側の広場との一体的な再整備を図る。
金印の展示コーナーなどの刷新に加え、博物館を国際会議の関連会場としても利用できるようにする。広場では池(約2500平方メートル)を4分の1に縮小し、レストランや休憩施設を設ける。博物館を囲っていた壁や花壇の一部を撤去し、福岡タワーや海岸に誘導する園路(約170メートル)を整備して観光客らの回遊性を高める。