そりゃサイバーエージェント強いわ…「いい人が採用できる職場」の人がしている凄い行動
「あなたの会社はZ世代に嫌がられるような採用活動をしていませんか?」――そう語るのは、ワンキャリア取締役の北野唯我さん。「常に人手不足」「認知度が低い」「内定を辞退されてしまう」「外資系との給与さが開いている」といった多くの採用担当者、経営者の悩みを解決するため、北野さんが執筆したのが、著書『「うちの会社にはいい人が来ない」と思ったら読む 採用の問題解決』です。これまで属人的で全体像が見えなかった採用活動を構造化し、3000社以上の企業の採用支援実績、180万人の求職者のデータに基づいた「新しい採用手法」を紹介した一冊です。この記事では、本書より一部を抜粋・編集して紹介します。 もし、あなたの会社の採用がうまくいっていないとしたら…。それは、企業イメージが「ない」ことに関係している。 そして突き詰めると、必ず根本的な原因にたどりつく。システム上のどこかに欠陥が隠れているはずだ。私が結論づけたものとして、欠陥は6種類に分類できる。 ①人事ポリシーの不在・形骸化:どんな人を採用したいかが定まっていない スタートアップでも大企業でもよくあるのが、人事ポリシーの不在・形骸化だ。企業イメージは「人事ポリシー」から形づくられるが、この人事ポリシーがそもそもない場合や、あったとしても、それが形骸化し、制度や発信に反映されていないケースがある。求職者視点からすると、一貫したコンセプトがない=イメージが醸成できない状態になっているのだ。この状態では、どれだけメディア露出したとしても、広告宣伝費を払ったとしても、浪費になりやすい。 人事ポリシーは、担当者単体では変えられないことも多い。そのため、改善にはトップや事業部長クラスのコミットメントが必要になる。 ②競合視点不足:採用競合と比べて給与が安い 2つ目は、ハード面(制度)での競合視点不足のケース。人事ポリシーが一貫していたとしても、競合に対してハード面で負けている場合、企業イメージを構築できないケースが多い。最もわかりやすいのは「報酬制度」や「福利厚生」である。特に、報酬制度で負けている場合、相当強い他の魅力がない限り、採用競合に対して優位に立つのは難しい。 2000年代頃までは、日本の企業の報酬制度はクローズドで、他社から見ることができなかった。それが、今ではネット上で調べれば実態はすぐに把握できてしまう。隠すことが難しい時代になった。 比較する際は、「同業他社」「採用競合」の2点で自社の立ち位置を整理する必要がある。2020年代からIT企業を中心に初任給を上げる動きが加速しているが、こういった企業は、「同業他社」だけではなく、「採用競合」をベンチマークにして設定していることが多い。メルカリは一時期、市場平均に対して20~25%高い年収を払うことを前提としていたという。 市場平均に対して自社がどのようなスタンスを取るかは、企業イメージに直結する。 ③採用カルチャー不足:社内の人が協力的ではない 3つ目は、ソフト面での採用カルチャー不足。全社に対しての採用活動へのコミットメント不足、採用技術不足だ。リクルートやビジョナル、サイバーエージェントなど、採用に強い会社は社員全体からの「採用へのコミットメント」が強い。自分たちが一緒に働く人は、自分たちで採用する。「採用にコミットし、成果を出した人=優秀な人、憧れの対象」というカルチャーが存在している。 とある超急成長中のコンサルティングファームの経営者は、採用を自社のカルチャーにするために、入社した新入社員からのメッセージを上手に設計していた。具体的には、新卒入社者が入社式のタイミングで、「なぜこの会社を選んだのか」を全社員向けに発表する仕組みをつくったという。入社した人が「社員のAさんとの出会いがなければ、この会社を選んでいなかった」と発表する。この発表は全社員が目にするため、当然、名前を言われた社員たちは光栄に思う。こうして、「採用にコミットする人=憧れの社員」であることを全員に伝え、文化として醸成している。 なお、採用カルチャーをつくり出すのは長期戦である。単年度で改善できる部分は少ない。複数年単位でつくり込む必要がある。 ④採用ターゲットのエラー:「誰に来てほしいか」が不明確 4つ目は、採用ターゲットが不明瞭、または間違っているケースだ。メディア資産をつくっていく際に、どんな求職者に見てほしいか、接点を持ちたいかの設定が重要になる。エリアは、関東なのか、関西なのか、その他の地域なのか。ターゲットはどんなコミュニティに存在していて、価値観はどんな人なのか。普段触れているメディアにはどんなものがあるのか。こうした採用ターゲットの設定が不明瞭なケースがある。 さらに、実はありがちなのが、「事業特性を踏まえて、採用ターゲットが設定できていない場合」だ。新しいことにチャレンジ精神を持って進めてくれる人が多く必要なのか、今ある仕事を安定してミスなく進めてくれる人が必要なのかは、事業特性により規定される。複数事業を展開する際は、この2つの組み合わせになることもある。にもかかわらず、「結局、誰が欲しいか」が不明瞭なまま採用が行われ、結果的に自社の企業イメージが見えてこないという場合もある。 ⑤メディアバランス不足:場当たり的にSNSだけをやっている 外部発信の際の「ストック型メディア」と「露出広報」のバランスが崩れている、または両者の量が不足しているケースがある。ストック型メディアとは、外部のクチコミメディアやSNS、自社オウンドメディアを指し、露出広報は、経済メディアへのコンテンツ露出、広告宣伝、PR露出を指す。メディア資産をつくる場合は、2つとも必須になる。 理由は、露出広報を見た人が→検索してストック型メディアを訪れる流れがあるからだ。大まかにいうと、露出広報=認知、ストック型メディア=理解と整理してもいいだろう。メディアバランスが崩れていると、実態がわからない状態か、認知が足りない状態になりやすい。 ⑥従業員満足度不足、インナーコミュニケーション不足:自社の人から不満が出る 最後6つ目が、インナーコミュニケーションや、従業員満足度不足による罠である。そもそも、採用を強化する上で重要なのは、既存社員からのリファラルや評判である。満足度が低い社員しかいない会社は、どれだけ外部で美辞麗句を述べたとしても効果は激減する。 特に、採用ターゲットを変える、企業イメージを変える際には、これまでの社員に対してのメッセージと不一致が起きやすい。
北野 唯我