「顔があいてるやん!」坂口涼太郎がなぜメイクをしているのかというと... 怒涛のコスメ売り場通いがスタート【坂口涼太郎エッセイ】
これ全部使ったら、顔で万物を表現できるで
そうやん! 顔があいてるやん! ここに好きな色を塗ればええやん! アクセサリーをするようにお絵描きしたらええやん! 着ているものとトータルコーディネートしたらええやん! こんなに私好みなこと逆になんで今までやってなかったんやろう。あははんあははんと花咲く野原をスキップするような気持ちで心晴れやかに帰路についた。 それからというもの、幼馴染のヘアメイクや私が美容の師匠と仰いでいる親友にご教授いただき、怒涛のお伊勢丹、ドラッグストアのコスメ売り場通いの日々が幕を開け、エメラルドグリーンのアイライナー、アイシャドウ、マスカラからはじまり、大好きな偏光パールのグリッター、アイライナー、ラメ、その色に合う色、その合う色に合う色を集め始めたらどんどん色が増えてゆき、そうや、今日は大好きなモネの睡蓮の色合いでお顔を色づけてみよう、明日はゴッホのアーモンドの花的な感じで、明後日は草間彌生さんのLove Foreverのエッセンスを、と顔面をキャンバスにして落書きするように好きなアートをメイクに取り入れて楽しむようになり、雪だるま式に必要と獲得の連鎖を繰り返して、一度足を踏み入れたらもう後戻りはできないと噂の美容インフィニティーの循環に身を投じたら、気がつけばシルク・ドゥ・ソレイユもびっくりのカラーメイクアイテム勢揃い。これ全部使ったら顔で万物を表現できるで、みたいなコレクションとなった。 すなわち、私がなんでメイクをしているのかというと、「好きな色を塗る場所が顔にあって、めっちゃ楽しいから」というのがひとつの回答やと思います。もうひとつは、飽きてたんやと思う。自分の顔に。この顔面で生きていくことについての諸問題にはだいぶ前に決着がついていて、もうこの顔については納得してるし、鏡を見ても、はい、そうですか、そうですね、という感じで顔との関係がマンネリ化してたんやと思う。 そんな私にも、かつてはこの顔に対してビー・バップ・ハイスクールもびっくりの反抗期がございました。 〈後半に続く…〉 文・スタイリング/坂口涼太郎 撮影/田上浩一 ヘア&メイク/齊藤琴絵 協力/ヒオカ 構成/坂口彩
坂口 涼太郎