<ボクシング>異色のリーゼント王者が事実上の引退危機
東洋太平洋スーパーバンタム級王者の和気慎吾(27歳、古口ジム)が、引退の危機に面していることが8日までに明らかになった。一度は、内定していた大晦日のWBA、WBO統一王者、ギジェルモ・リゴンドー(キューバ)への世界初挑戦を和気が拒否して“逃亡”。その不可解な回避への経緯を巡ってジム側が、和気に不信感を抱き、今後のマッチメイクも厳しい状況に追い詰められた。このまま事実上の引退状態となる可能性も出てきた。
リーゼントボクサーのキャラでファンの間で密かな人気が出始めていた東洋王者の和気は、12月30日に東京体育館で行われるトリプル世界戦のアンダーカードで、ジミー・パイパ(フィリピン)と防衛戦を行うことが内定しており、所属先の古口ジムの古口哲会長は、プロモーターと契約書も取り交わしていた。だが、その後、TBS側から統一世界王者のリゴンドーへの世界挑戦話が舞い込んだため、古口会長は、そのリゴンドー戦へ方向転換。東洋太平洋戦のプロモーターに「東洋戦は破棄したい」と連絡をした上で、和気本人とも話し合いを持って11月8日にTBS側と和気本人を交えて交渉の席を持ち、リゴンドー戦を了承する旨を伝えた。 五輪2連覇後に米国へ亡命してプロ転向。14戦無敗で中軽量級世界最強とも言われる超大物ボクサーへの挑戦について、古口会長も「厳しい試合になることは確かだが、上がり調子の和気なら何が起きるかわからない。大晦日という大きな舞台で、あのリゴンドーと戦えることは財産になるし、たとえ負けたとしても次につながる」と考え、和気本人も、TBSの責任者を前に「やります」と断言した。 だが、この動きに東洋太平洋戦をプロモートしていた関係者が意義を唱え、翌9日には古口会長の頭越しに、和気を呼び出し同伴させた上で、TBS側に「東洋戦を先に契約しているので、今回のリゴンドー戦は無効であり、やらない」と伝えた。そのボクシング関係者は、「和気は、フジテレビがここまで育てた選手。それを試合契約した後にTBSに鞍替えするのは、業界のルールに反するし、リゴンドーとやっても勝てないし意味がない。来年はフジテレビが世界戦を組むと言っている。JBCも、すでに認定した試合契約を破棄したらとんでもないことになる」と言って、和気を説得したようだが、和気のマネジメント権を持つ古口会長を通さずに、このような話を独断で進めたため、事態は最悪の展開となった。 和気がリゴンドー戦を断った話をTBS側の責任者から聞かされた古口会長は驚き、その事実関係の確認のため和気に電話連絡をとったが、「やりません」と答えただけで詳しい説明もなく、以降、ジムにも一切顔を出さずに音信不通となった。大晦日の目玉カードにリゴンドー戦を組んでいたTBS側は、最終的な返答リミットを11月18日に定めていたが、その日を過ぎても和気との連絡がつかなかったためリゴンドーvs和気戦は消滅。リゴンドー戦のプロモーターである協栄ジムの金平柱一郎会長が動いて東洋太平洋フェザー級王者である天笠尚(山上)に急遽、挑戦者を変更した。